【映画コラム】 『県庁おもてなし課』をはじめ“ご当地映画”が続々登場
2013年5月11日
関ジャニ∞の錦戸亮が主演した『県庁おもてなし課』が11日から全国公開された。この映画の原作は『図書館戦争』など著作の映画化が相次ぐ有川浩の同名小説。彼女の出身地である高知の県庁に実在する“おもてなし課”が舞台となっている。錦戸演じる若手県職員が“人をおもてなしする”ために自分が生まれ育った町を見詰め直していく姿が爽やかに描かれる。
また、同日、北海道の札幌でロケが行われた大泉洋主演の探偵シリーズ第2弾『探偵はBARにいる2 ススキノ交差点』も全国公開された。このように特定の地方を舞台にした“ご当地映画”の製作がこのところ盛んに行われている。その中には、各地のフィルムコミッション(映像作品の撮影を誘致し、実際のロケをスムーズに進めるための非営利公的機関)や製作委員会が積極的に働き掛け、製作に協力した結果、誕生した映画も少なくない。
ジャパン・フィルムコミッション(JFC)によれば、世界初のフィルムコミッションは1969年にアメリカのコロラド州政府が設立した「コロラド・フィルムコミッション」だという。日本では大林宣彦監督が、80年代に故郷の広島県尾道で地元の協力を得て撮影した『転校生』(82)、『時をかける少女』(83)、『さびしんぼう』(85)の「尾道三部作」がフィルムコミッションの先駆けとされる。
ここで、今後公開になる“ご当地映画”を2本ご紹介しよう。25日から全国順次公開される金子修介監督の『百年の時計』は、高松琴平電鉄(通称ことでん)の開業100周年を記念して製作され、撮影はすべて香川県内で行われた。美術館の若い女性職員(木南晴夏)と気まぐれな老芸術家(ミッキー・カーチス)がことでんを通じて百年の時を追体験していく様子が描かれる。地方のレトロな鉄道と登場人物の人生をリンクさせるという点では、島根県一畑電車の『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』(10)と富山県富山地方鉄道の『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』(11)にも通じるものがある。
もう1本は、8月10日公開の吉田康弘監督作『江ノ島プリズム』。神奈川県の江の島周辺と江ノ島電鉄(通称江ノ電)を舞台に、幼なじみの修太(福士蒼汰)と朔(野村周平)とミチル(本田翼)の微妙な関係を描いた青春映画。タイムスリップが可能になった修太が、朔の命を救うために、現在と過去を行き来する。大林監督の『時をかける少女』同様、時が持つ切なさを描いた甘酸っぱい一作だ。
見慣れた風景が映画に現れるとそれだけでも楽しい。明日は、あなたの住む町を映画のロケ隊が訪れるかもしれない。(田中雄二)
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