【映画コラム】男くささに満ちた骨太なドラマ『ラッシュ/プライドと友情』
2014年2月8日
1976年のF1シーズンに焦点を当てたロン・ハワード監督の『ラッシュ/プライドと友情』が7日から公開された。
本作の主人公は、実在のF1レーサー、ジェームス・ハント(クリス・ヘムズワース)とニキ・ラウダ(ダニエル・ブリュール)。
自由奔放で天才肌のハントと完璧主義者で頭脳派のラウダという全くタイプの異なる2人のライバル関係、勝負、栄光、ラウダを襲った事故、そしてその後の人生が描かれる。
本作の見どころは迫力満点のレースシーンはもちろんだが、ハントとラウダを演じたヘムズワースとブリュールの迫真の演技にある。2人は、互いに認め合いながらも、相手を過剰に意識し、畏怖し、対立するというハントとラウダの複雑微妙な関係を見事に表現している。
特に同時公開中の『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』では人間離れしたマーベルコミックのヒーローを演じたヘムズワースが、本作では一転して実に人間くさくハントを演じている点に注目してほしい。最高のはまり役と言っても過言ではないほどの出来栄えだ。
一方、ハワード監督は過去にも、ラッセル・クロウ主演で実在の天才数学者を描いた『ビューティフル・マインド』(01)とボクシングの世界王者を描いた『シンデレラマン』(05)というユニークな伝記物を巧みに撮っている。
今回はそれに加えて、宇宙からの奇跡の生還を描いた『アポロ13』(95)同様、観客がすでに結果を知っている有名な事件を、いかにハラハラドキドキさせながら見せるかという点に苦心したという。本作のクライマックスは日本の富士スピードウェイを舞台にした雨中のシーズン最終戦。ハワード監督がこれをどう描いたのかも見どころとなる。
最近は“男”を描いた映画が少なくなっているが、本作では、偉大なるばかな男たちが奏でる、男くささに満ちた骨太なドラマを十分に楽しむことができる。(田中雄二)
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