【映画コラム】明治人の気骨や芸術家魂を浮かび上がらせた『天心』

2013年11月23日 / 19:04

(C)2013映画「天心」製作委員会

 今年、生誕150年、没後100年を迎えた“日本近代美術の父”岡倉天心の生涯を描いた『天心』が16日からシネマート新宿ほか全国順次公開中だ。

 天心は明治時代に東京美術学校(現東京芸術大学)の校長を務め、思想家・文人としても日本画の再興に尽力した。その名は師のフェノロサと共に歴史の教科書にも登場するが、映画やドラマでその生涯が描かれたことはほとんどない。

 本作では、竹中直人が奇抜なファッションに身を包み、独特のおかしみを持って、偉人としてではなく人間味にあふれた癖のあるキャラクターとして天心を演じている。

 映画は、昭和12年に第1回文化勲章を受章した横山大観(中村獅童)が師の天心や仲間たちと過ごした若き日々を回想する形で進行していく。そのため、天心を中心に、弟子の大観、下村観山(木下ほうか)、菱田春草(平山浩行)、木村武山(橋本一郎)が集う群像劇として見ることができる。

 そして、彼らが芸術と生活のはざまで悩む姿や、仲間同士の嫉妬や葛藤、友情などを描き込むことで、明治人の気骨や芸術家魂を浮かび上がらせていく。特に38歳の若さで亡くなった春草の知られざる生涯をクローズアップしたところが素晴らしい。演じた俳優たちもそれぞれが見事な好演を見せてくれる。

 また、天心が思索の場として茨城県五浦海岸に建てた六角堂の周辺で実際に撮影したことも大きな効果を上げている。六角堂は東日本大震災の際に津波で消失したが、震災からの復興の象徴として再建された。本作に登場するのは再建後の姿。本作には復興支援映画としての側面もあるのだ。天心と現在とのつながりを感じさせるエピソードである。

 ドキュメンタリー作品出身の松村克弥監督は、再現ドラマを見せるようにしながら、歴史の渦の中で忘れられていった男たちの人生を掘り起こした。あらためて彼らの生涯を知ることで、彼らの作品に触れてみたくなるような映画に仕上がっている。(田中雄二)


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