【映画コラム】3Dが絶大な効果を発揮する“体験型スペースサスペンス”『ゼロ・グラビティ』

2013年12月14日 / 18:54

(C)2013 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.

 サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーが共演したSF大作『ゼロ・グラビティ』が13日から公開された。

 監督は『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(04)などのアルフォンソ・キュアロン。彼は「主人公のエモーショナルな旅をどう見せるかがこの映画のテーマ。彼女が逆境や不幸をどう克服していくのかを視覚的なメタファーをちりばめながら描いた」と語っている。

 地上60万メートルのスペースシャトルの船外。メディカルエンジニアのライアン・ストーン博士(ブロック)は、ベテラン宇宙飛行士のマット・コワルスキー(クルーニー)のサポートを受けながら通信システムの修復に当たっていた。余裕たっぷりのコワルスキーがヒューストンの管制官にジョークを飛ばす中、突然作業中止の緊急連絡が入る。

 ロシアの人工衛星が爆発し、そのかけらが無数の破片となって猛スピードで迫っているというのだ。2人は逃げる間もなく破片と接触し、宇宙の暗闇に投げ出される。残る酸素はわずか2時間分、地球との連絡も途絶えた漆黒の闇の中、2人の運命やいかに…。

 見る前は、宇宙空間でのほぼ2人だけの演技ということで、果たして1時間半をどう持たせるのかと思ったが、オープニングからの長回し(切れ目なしに長時間カメラを回し続ける技法)と有無を言わさぬ展開の速さに驚いているうちに、気が付けば映画館の暗闇の中で宇宙の暗闇にいる2人にすっかり同化させられていた。

 手に汗握る緊迫感にあふれた“体験型スペースサスペンス”という触れ込み通り、3Dが絶大な効果を発揮する。宇宙空間の奥行きの広さを見事に表現したという点では名作『2001年宇宙の旅』(68)にも匹敵するだろう。

 また、娘を事故で亡くし生きることを諦めかけていたライアンが、宇宙空間で次々と試練に見舞われるうちに、生きる活力を見いだしていくという設定も心を打つ。こうしたライアンのバックグラウンドはサンドラの提案で加えられたという。

 最後におまけの情報を一つ。2人と交信を交わすヒューストンの管制官の声を演じたのは『アポロ13』(95)で主席管制官を演じたエド・ハリス。キュアロン監督の粋なサービスである。(田中雄二)


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