【映画コラム】“日本のシンドラー”とは何者だったのか『杉原千畝 スギハラチウネ』
2015年12月5日
第2次大戦中、リトアニアのカウナス領事館員としてユダヤ人難民にビザを発給し、多くの人の命を救った日本人外交官の生涯を描いた『杉原千畝 スギハラチウネ』が公開された。
杉原の存在は、スティーブン・スピルバーグ監督が、ナチスドイツのホロコーストから多くのユダヤ人の命を救った実業家オスカー・シンドラーの姿を描いた『シンドラーのリスト』(93)の公開時に注目され、杉原は“日本のシンドラー”と呼ばれた。
ところで、シンドラーは決して品行方正ではなく、ヒーロー的な人物でもなかったが、そうした人間が結果として善を施すという意外性が映画に深みを与えていた。
対する本作は、杉原を単なる人道主義者としてではなく、混乱した世界を変えたいと夢想した理想家として描いている。また、前半の満州時代は、まるでスパイ映画のように、激しい戦いの真っただ中に身を置く敏腕諜報員として活躍させる。演じる唐沢寿明が英語のせりふを駆使して頑張っている。
こうした虚実入り混じった描き方にはもちろん賛否があるだろうが、少なくとも、戦時下の日本にもこんな人物がいたのかという興味を引くことはできるし、もっと杉原のことが知りたいと思うきっかけにもなるだろう。
また本作は、ポーランドでロケを行い、オランダ領事、杉原の運転手、カウナス領事館職員などを演じたポーランドの俳優たちが見事な存在感を示す。彼らのおかげで杉原を取り巻く群像劇として見ることができる。
ドイツとの間に複雑な歴史を抱え、アウシュビッツ強制収容所があるポーランドの人々にとって、本作が描いたユダヤ人の受難は決して他人事とは思えなかったのだろう。また、日本人にとっても、本作は、シリアをはじめとする、現代の難民問題について考える契機となるはずだ。(田中雄二)
-
2015年11月28日
【映画コラム】ダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドの集大成『007 ス... -
2015年11月21日
【映画コラム】ユニークなドキュメンタリー『美術館を手玉にとった男』... -
2015年11月14日
【映画コラム】真実とうその境界線はどこにある?『ローマに消えた男』 -
2015年11月7日
【映画コラム】食べることは生きることなのだと思わされる『起終点駅 ... -
2015年10月31日
【映画コラム】見ながら元気になれる映画。観客賞を受賞したのも納得の... -
2015年10月24日
【映画コラム】生きることとは何か、死ぬこととは何かを考えさせられる... -
2015年10月17日
【映画コラム】永遠の若さは果たして幸せなのか!? 『アデライン、100年... -
2015年10月3日
【映画コラム】 ゲーム感覚で行われる戦闘の怖さを描いた『ドローン・... -
2015年9月26日
【映画コラム】若手俳優たちを得て作られた新機軸の青春群像時代劇『合葬』 -
2015年9月21日
【映画コラム】 マーベル・スタジオからまた新たなヒーローが登場『ア... -
2015年9月12日
【映画コラム】過去の映画やゲームへのオマージュを最新技術で描く『キ... -
2015年9月5日
【映画コラム】老優の存在感と脚本のうまさで楽しませる『ヴィンセント... -
2015年8月29日
【映画コラム】“女優・大島優子”にとってエポックメーキングな作品にな... -
2015年8月22日
【映画コラム】ユニークな“年の差バディ(相棒)映画”『ビッグゲーム ... -
2015年8月15日
【映画コラム】戦後70年を迎えた今だからこそ見るべき映画『日本のいち... -
2015年8月8日
【映画コラム】夏休みは恐竜とトムの一騎討ち!? 『ジュラシック・ワール... -
2015年8月1日
【映画コラム】夏の音楽の代名詞、ビーチ・ボーイズの光と影を描いた『... -
2015年7月25日
【映画コラム】喜劇王チャプリンが天上から演出した!? 『チャップリン... -
2015年7月18日
【映画コラム】特撮の進歩とシュワルツェネッガーの変化を楽しむ『ター...

