【映画コラム】手に汗握りながら、それでも目が離せない『ザ・ウォーク』
2016年1月23日
1974年、地上411メートルの道なき空間をワイヤロープ一本でつなぎ、命綱なしで行き来した一人の男の冒険を、実話を基に描いた『ザ・ウォーク』が公開された。
舞台は、当時世界最高層のビルだったニューヨークのツインタワー「ワールドトレードセンター」。主人公のフランス人はフィリップ・プティ(ジョセフ・ゴードン=レビット)という。
見る前は、すでに成否が分かっているたった数分間の出来事を中心にして、果たして2時間余りの映画として見せ切れるのか、という疑問があった。
ところが、監督のロバート・ゼメキスは、プティと師匠(ベン・キングズレー)、あるいはプティと“冒険の共犯者たち”とのユニークな関係をサイドストーリーとして描き、それによってプティの人柄や魅力を浮き彫りにしていくことでストーリーを膨らませていった。
また、プティの行為や彼に魅せられていく人々の姿を通して、人生には、何の役にも立たない無駄なことや遊び心が必要な時もある。それを極めれば人々を感動させることもできる。芸術や娯楽の意義とは本来そうしたものなのでは、ということも気づかせてくれる。
さらに、今となってはもう二度と見ることができない、2001年の同時多発テロで崩壊したワールドトレードセンターの威容や、そこから見た当時のニューヨークの風景を、映像として再現することで見る者のノスタルジーを刺激する。
ゼメキスは過去の監督作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)や『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)同様、今回も最新映像を駆使しながら、細部にこだわり、鮮やかに“過去”をよみがえらせることに成功した。
そして、3Dが絶大な効果を発揮する、プティの“空中闊歩(かっぽ)”のシーンがやはり圧巻。高所恐怖症ならずとも、恐怖のあまり鳥肌が立ち、下腹がきゅんとなり、手に汗握るが、プティや仲間たちの思いを知らされた後だけに、その成功を願って目が離せなくなるのだ。(田中雄二)
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