【映画コラム】驚きに満ちた新たなる映像体験が楽しめる『ジャングル・ブック』
2016年8月13日
ジャングルに取り残された人間の赤ん坊モーグリは、黒ヒョウとオオカミに育てられ、幸せな日々を過ごしていた。ところが、人間に恨みを抱くトラのシア・カーンがジャングルに戻ってきて…。壮大な冒険物語『ジャングル・ブック』が公開された。
英国の小説家ルドヤード・キプリングが19世紀末に執筆した連作短編小説は、これまでにもたびたび映像化されてきた。中でも有名なのは、ウォルト・ディズニーの遺作となった1967年のアニメーション版。それから半世紀をへて、新たに実写映画として製作された。監督は『アイアンマン』シリーズのジョン・ファブローが担当している。
動物たちを擬人化するのは漫画やアニメでは決して珍しいことではない。実際、筆者も子供のころに見たアニメーション版の『ジャングル・ブック』を大いに楽しんだことを覚えている。ところが、より現実的な実写版となるとこれがなかなか難しい。それ故、映画を見る前は、擬人化され、人間の言葉を話す動物たちへの違和感を危惧していた。
ところが、モーグリ役の12歳のニール・セディ少年を除けば、登場する動物や背景を全て最新のCG技術で構成した本作は、リアルな姿ながら人間味を持った動物たちを登場させたばかりでなく、スピード感と迫力満点の映像を駆使して、見事に違和感を払拭(ふっしょく)してくれた。そのおかげで、単なる実写でもアニメーションでもない、驚きに満ちた新たなる映像体験を心の底から楽しむことができたのだ。
『アバター』(09)は3D映画に革命を起こしたが、本作は3DやCGを駆使した映画のさらなる高みや可能性の大きさを示したと言っても過言ではないだろう。
また、セディ少年の大活躍に加えて、ベン・キングズレー、ビル・マーレイ、ルピタ・ニョンゴ、スカーレット・ヨハンソン、クリストファー・ウォーケンら、適材適所に配された声優たちの“好演”も貢献大。日本語版も松本幸四郎、西田敏行、宮沢りえ、伊勢谷友介らが担当しているが、個人的には字幕版がお薦め。
くしくも『ターザン:REBORN』も公開中。人はなぜジャングルに引かれるのかと考えると別の興味も湧く。親子そろって見るにはもってこいの映画だ。(田中雄二)
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