【映画コラム】佐藤健は“剣豪スター”になれる! 『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』
2014年8月2日
激動の幕末を刀一本で生き抜き“人斬り抜刀斎(ばっとうさい)”と呼ばれた伝説の男・緋村剣心(佐藤健)の戦いを描き、大ヒットを記録した『るろうに剣心』(12)。シリーズ完結編となる2部作の『京都大火編』が1日に公開され、続いて『伝説の最期編』が9月13日から公開される。
前作での激しい戦いを終えた剣心は、彼を慕う薫(武井咲)が営む道場で、弥彦(大八木凱斗)、左之助(青木崇高)、恵(蒼井優)と共に平穏な暮らしを送っていたが、新政府の転覆をたくらむ志々雄(藤原竜也)一派との戦いに身を投じる。
例えば、16代米大統領のエーブラハム・リンカーンが実は吸血鬼ハンターだったとした『リンカーン/秘密の書』(12)のように、史実とフィクションを巧みに織り交ぜたストーリーの中で実在と架空の人物が入り乱れるという“壮大なほら話”は、見る者の想像力をかき立てる楽しさがあるが、本シリーズにもそうした魅力がある。
今回は、前作から引き続いて登場する新撰組の生き残りで警官となった斎藤一(江口洋介)に加えて、内務卿の大久保利通、警察機構の父と呼ばれた川路利良らも顔を見せ、旧幕府の御庭番一派も参戦する。こうした講談調の伝奇ロマンは決して目新しいものではないが、伝統的な作劇法とスピードと迫力に満ちた今風の立ち回りを融合させたところが、本作の新感覚時代劇たるゆえんだ。
黒澤明監督は名作『七人の侍』(54)について「ステーキの上にうなぎのかば焼きを乗せ、カレーをぶち込んだような、観客がもう勘弁、腹いっぱいという映画を作ろうと思った」と語ったが、本作の大友啓史監督もそれに倣って「ステーキにトリュフを乗せて、その上にふかひれスープを掛けたような映画にしたかった」と語っている。
さらに黒澤関連で言えば、佐藤は本シリーズでのすさまじいソードアクションで、同監督の『用心棒』(61)などの三船敏郎にも匹敵する“剣豪スター”になり得る可能性を示したとも言える。今後が楽しみだ。(田中雄二)
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