【映画コラム】岡田准一起用で時代劇継承の可能性を示した『蜩ノ記』
2014年10月4日
役所広司と岡田准一が師弟役で共演した時代劇『蜩ノ記』が4日から公開された。監督・脚本は黒澤明監督に師事した小泉堯史。“継承”というテーマが本作の核となる。
戸田秋谷(役所)は、主君の側室と不義を働いた罪で、10年後に切腹することと、切腹の日までに藩の歴史を記した「家譜」を完成させることを命じられる。
月日は流れ、切腹の日が3年後に迫るころ、秋谷の見張り役として檀野庄三郎(岡田)が戸田家に住み込むことになる。やがて庄三郎は秋谷が起こした事件の真相を知るが…。
全てを淡々と受け入れ、「家譜」の編さん作業に打ち込む秋谷が最後に示す武士としての意地と誇り。あくまで秋谷を信頼し、深い愛情を寄せる家族の姿。秋谷の背中を見ながら疑惑から尊敬へと変化する庄三郎の心情。そして秋谷の精神が庄三郎に受け継がれる様子などが、四季の移り変わりを背景に描かれる。撮影は黒澤組で修業した上田正治が担当。役所の自然体の演技、岡田の剣技と若侍らしく背筋をぴんと張った立ち居振る舞いも見どころとなる。
また、葉室麟の直木賞受賞小説を映画化した本作には、庄三郎が秋谷の行動の真意を探る一種の謎解きミステリーとしての要素もあるが、筋を通すために愚直に生きる主人公という点では、黒澤が好んだ山本周五郎の世界にも通じるものがある。ちなみに小泉監督のデビュー作も周五郎原作の『雨あがる』(00)だった。
さらに、未熟な若者が人生の師の下で修業するというストーリー、複数のカメラでの撮影、細部にこだわった美術、登場人物たちの立ち居振る舞いはもちろん、冒頭の大雨、『赤ひげ』(65)の三船敏郎をほうふつとさせる岡田の素手での乱闘シーンなどに、小泉監督による黒澤スピリッツの継承が見られる。
時代劇の製作にはさまざまなノウハウや技が必要とされる。役所は出演作『最後の忠臣蔵』(10)の会見で「スタッフの技を次世代に伝えなければならない」と時代劇製作の意義を訴えたが、本作は岡田の起用などで、時代劇継承の新たな可能性を示したとも言える。(田中雄二)
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