【映画コラム】 新人女優、上白石萌音を発見するための映画『舞妓はレディ』
2014年9月13日
舞妓(まいこ)を目指してお茶屋の世界に飛び込んだ少女が成長していく姿を、ミュージカル仕立てでユーモラスに描いた『舞妓はレディ』が13日から公開された。
あまり知られていない仕事や趣味を描く“入門映画”を得意とする周防正行監督。今回は、京都、舞妓、芸者、お茶屋といった特異な事柄をちりばめながら、花街という独特な世界の内側を活写した。京都出身、または京都と縁が深い、富司純子、田畑智子、岸部一徳らのナチュラルな京都弁も心地良く耳に残る。
「舞妓になりたい」と、京都の花街、七八軒(しもはちけん)のお茶屋を訪ねてきた春子(上白石萌音)。だが彼女には、鹿児島弁と津軽弁の交じった強いなまりがあった。言語学者の京野(長谷川博己)は周囲の反対をよそに「なまりを直して立派な舞妓にしてみせる」と宣言。春子は京野と共に特訓の日々を送ることになる。
と、これはどこかで聞いた話だと思う人も少なくないのでは。そう、本作はオードリー・ヘプバーンが粗野な花売り娘からレディーに変身するミュージカル『マイ・フェア・レディ』(64)を下敷きにしている。タイトルも語呂合わせになっているし、『マイ・フェア・レディ』の名ぜりふ「スペインでは雨は主に広野に降る」が「京都の雨は大概、盆地に降るんやろか?」に変化していたりもする。
だが、本作と『マイ・フェア・レディ』の大きな違いは、上白石萌音という新人女優の発見にある。彼女自身と主人公の春子の成長ぶりが重なって見えてくるところは、すでに大スターだったオードリーが演じた『マイ・フェア・レディ』にはない魅力だ。
また、往年のミュージカルを意識した振り付けとセット撮影であえて“人工の美”を生み出しながら、和の魅力を強調したところも独特。
優れたミュージカルは、耳に残る名曲を生むのが常だが、本作も見終わった後に♪舞妓はレディ~♪のフレーズが耳から離れなくなり、つい口ずさんでしまう。音楽の周防義和の功績も見逃せない。(田中雄二)
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