【映画コラム】毎日の生活を平然と送ることの素晴らしさを描いた『この世界の片隅に』
2016年11月15日
昭和20年の広島・呉を舞台にしたアニメーション映画『この世界の片隅に』が公開された。
太平洋戦争末期の昭和19年。広島から軍港の街・呉の北條家に嫁いだ18歳のすず(声=能年玲奈改め、のん)。見知らぬ土地で明るくけなげに生きる彼女の日常を丁寧に描く。
原作は『夕凪の街 桜の国』も映画化された広島出身のこうの史代の漫画。監督・脚本の片渕須直が「戦争が対極にあるので、毎日の生活を平然と送ることの素晴らしさが浮かび上がってくる」と語るように、本作はあくまで日常に重点を置いて描いている。その中から「それでも私は生きていく」というメッセージや自分の居場所というテーマが発信される。
最初は、精緻に再現された戦前の広島や呉の風景描写と“ヘタウマ”で描かれたようなキャラクターとのギャップに違和感を抱くが、徐々になじんできて、最後は独特の世界に引き込まれてしまう。それは、のんの声優ぶり、「悲しくてやりきれない」をリメークしたコトリンゴのテーマ曲に対する印象も同様。じわじわと心に染み込んでくるという感じだ。
『君の名は。』『聲(こえ)の形』と、今年はアニメ映画の当たり年。中でも、クラウドファンディング(インターネット経由で財源の提供などを行う)で製作され、誠実に作られた小品の本作を思わず応援したくなる。(田中雄二)
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