【映画コラム】平凡な男が己の人生を変えていく姿を描いた『LIFE!』
2014年3月22日
空想癖がある平凡な男が現実を見詰め直しながら己の人生を変えていく姿を描いた『LIFE!』が19日から公開された。監督・主演は『ナイト・ミュージアム』シリーズなどでおなじみのベン・スティラー。
写真誌『LIFE』の写真管理部で働くウォルター・ミティ(スティラー)。雑誌の廃刊が決まる中、最終号の表紙を飾る写真のネガがないことに気付いたミティは、持ち主のカメラマンを捜すために一世一代の旅に出る。
本作の原題は「THE SECRET LIFE OF WALTER MITTY」。実は、原作ジェームズ・サーバー、製作サミュエル・ゴールドウィン、監督ノーマン・Z・マクロード、主演ダニー・ケイで製作された名作コメディー『虹を掴む男』(47)のリメーク版だ。
オリジナルのミティは、白昼夢の中で帆船の船長、天才外科医、空軍の撃墜王、西部のガンマンなどに変身する。これは希代のボードビリアンとして知られたケイの芸を存分に見せるための手法だった。映画は大ヒットし“ウォルター・ミティ”は途方もない空想家の代名詞ともなった。
変わってゴールドウィンの息子と孫がプロデュースした本作は、前半はミティが思いを寄せるシェリル(クリステン・ウィグ)を絡めた彼の妄想が最新のVFXを使って表現されるが、ミティが行方不明となったカメラマンを追う中盤からは、アメリカ、グリーンランド、アイスランド、ヒマラヤと舞台が目まぐるしく変化する壮大な冒険談となる。
とは言え、ミティを演じているのが平凡な男の役を得意とするスティラーだけに、『ナイト・ミュージアム』シリーズ同様、ダメな男の再生劇としての面が強調されている。そこがオリジナルとは大きく異なる点だ。
また、さまざまなシーンに合わせて「マンイーター」(ホール&オーツ)、「エスケイプ」(ルパート・ホルムズ)、「愛の残り火」(ヒューマンリーグ)、「スペイス・オディティ」(デビッド・ボウイ)、「夢の夢」(ジョン・レノン)といった既存の曲をうまく盛り込んでいるところも面白い。
ミティの母親役のシャーリー・マクレーン、ストーリーの鍵を握るカメラマン役のショーン・ペン、嫌味な上司役のアダム・スコットと脇役陣も光る。アメリカではクリスマス映画として公開されたこともあり、ラストにはちゃんと“奇跡”が用意されている。それにしてもスティラーは嵐の二宮和也とよく似ている!(田中雄二)
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