【映画コラム】夏の音楽の代名詞、ビーチ・ボーイズの光と影を描いた『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』
2015年8月1日
ザ・ビーチ・ボーイズの中心的存在として「サーフィン・U.S.A.」など数々の名曲を生み出したブライアン・ウィルソン。彼の半生を描いた『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』が8月1日から公開された。
最近、『ジャージー・ボーイズ』『JIMI:栄光への軌跡』『ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男』など、1960年代の音楽シーンを背景に、スーパースターの栄光と挫折、苦悩、復活を描いた映画が相次いで製作されているが、本作もその流れの中にある。
明るく健康的な曲調、爽やかなハーモニーから、カリフォルニア・サウンドと呼ばれ、夏の音楽の代名詞ともなっているビーチ・ボーイズ。だがブライアン本人は、サーフィンはおろかスポーツとは無縁で、内向的で人付き合いも苦手な上に、父親との確執によって精神的にも不安定と、自身が作り出した曲のイメージとは全く性格の違う人物だった。そのギャップの大きさが彼に重くのしかかるのだが、本作はブライアンにしか聴こえない“音”を表現することで彼の孤独を際立たせている。
そして、アルバム『ペット・サウンズ』がザ・ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に大きな影響を与えたことからも明らかなように、ブライアンは音楽的には天賦の才に恵まれながら、やがて酒や薬に溺れ、精神的に壊れ、ひきこもり状態となっていく。
本作のユニークな点は、60年代のブライアンをポール・ダノ、どん底に落ちた80年代をジョン・キューザックが演じ、現在と過去を交錯させながら描いているところ。ブライアンの屈折や心情をそれぞれの形で表現した二人の演技、細やかに再現されたレコーディング風景などが見どころ、聴きどころとなる。
また、ブライアンの絶望と再起の象徴として、彼を利用し束縛した精神科医と彼を“慈悲深く”理解し後に妻となったメリンダを登場させ、ドラマに深みを持たせた。ポール・ジアマッティとエリザベス・バンクスの好演も見逃せない。(田中雄二)
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