【映画コラム】3人の少年たちが起こした“奇跡”とは…『トラッシュ!-この街が輝く日まで-』
2015年1月5日
ブラジルを舞台に、3人の少年たちが起こした“奇跡”を描いた『トラッシュ!-この街が輝く日まで-』が9日から公開される。
リオデジャネイロ郊外でゴミ拾いをしながら暮らしている3人の少年たち。ある日、彼らの1人がゴミの山の中から財布を拾う。その中身は、わずかな現金、IDカード、ポケットカレンダー、少女の写真、アニマルロトのカード、そしてコインロッカーの鍵…。
ところが、そこにはブラジル社会を揺るがすほどの重大な秘密が隠されていた。警察の追及が迫る中、3人は“正しい道”を選ぶため、財布に隠された謎を自ら解き明かす決心をする。
いずれもオーディションで選ばれたという演技未経験の少年たちの好演に加えて、彼らを温かく見守る神父役のマーティン・シーンと教師役のルーニー・マーラの姿が胸を打つ。
そんな本作は、表向きは『E.T.』(82)『グーニーズ』(85)『スタンド・バイ・ミー』(86)『SUPER8/スーパーエイト』(11)といった“ある秘密”を共有する少年たちを主人公にした、ジュブナイル冒険物の一種として見ることもできるが、実は一筋縄ではいかないものを持っている。
まず本作は、原作の舞台となった架空の町をリオデジャネイロに限定することで、貧困や差別、児童虐待といった問題を浮き彫りにする社会性を得た。
さらに、スタッフに目を移すと、監督はバレエダンサーを目指す少年を主人公にした『リトル・ダンサー』(00)のスティーブン・ダルドリー、脚本は『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』(13)などロマンチックコメディーを得意とするリチャード・カーティス、そして、ストリートチルドレンの抗争を描いた『シティ・オブ・ゴッド』(02)を監督したブラジル人のフェルナンド・メイレレスが製作に協力している。
だからこそ本作は、3人の監督たちの持ち味が見事に融合し、少年たちの微妙な心理とロマンチシズム、そして厳しい現実がないまぜになって描かれる。奇跡の物語を、単なるファンタジーにはしなかったところが本作の真骨頂なのだ。(田中雄二)
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