【映画コラム】血のつながりや家族について問い掛ける『そして父になる』

2013年9月21日 / 19:07

(C)2013『そして父になる』製作委員会

 6歳の息子は、病院で取り違えられた他人の子だった。実の子か育ての子か…。二つの家族の選択の様子を通して「血のつながりとは、家族とは?」を問い掛ける問題作『そして父になる』が28日から全国公開される。

 事件に巻き込まれた家族は、片や大手建設会社に勤め、都内の高級マンションに暮らす野々宮夫妻(福山雅治、尾野真千子)と一人息子、片や群馬県で小さな電気店を営む斎木夫妻(リリー・フランキー、真木よう子)と長男。

 野々宮はクールでエリート意識の強い男だが、父や義母との関係にトラウマを抱え、妻や息子とも距離を置いて接している。一方、斎木はいささか粗野だが正直者。妻と共に飾らず、心底子供をかわいがっている。

 この対照的な二つの家族が、子供の交換を前提に交流を始める。果たして血のつながりなのか、それとも共に過ごした時間なのか。そして新たな絆は生まれるのか。本作はあえて答えは出していないが、タイトル通り、野々宮が“本当の父親”になっていく姿が中心に描かれ、福山が野々宮の心の変化を見事に表現している。

 本作の監督・脚本・編集を担当した是枝裕和氏は、番組制作会社で数多くのテレビドキュメンタリーを手掛けた後、1995年に『幻の光』で映画監督デビューした。これまでも、柳楽優弥が第57回カンヌ国際映画祭で最優秀主演男優賞を受賞した『誰も知らない』(04)や『歩いても 歩いても』(08)など、ドキュメンタリータッチでさまざまな家族の姿を描いてきた。本作もその延長線上にあると言える。

 ところで本作は、第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞し、「小津安二郎以来の家族というテーマを受け継いだ作品」と評した海外メディアもあった。このように日本の家族映画と言えばまず小津の名前が挙がるが、実は本作よりも以前に同様の子供の取り違え事件を描いた「わが子は他人」(74)というテレビドラマが存在した。制作は、今年生誕100年を迎え、記念映画『はじまりのみち』が公開された木下惠介。本作のように小津というよりも木下の影響を受けたであろう家族物もまた少なくはないのだ。

 最後に、野々宮の父を演じた夏八木勲は、今年の5月に亡くなったが、本作のほかにも、『脳男』、『ひまわりと子犬の7日間』、『サンゴレンジャー』、『終戦のエンペラー』、『永遠の0』と出演作の公開が目白押し。病を知りながら演じ続けたところに俳優としての執念を感じさせる。くしくも是枝監督が演出したテレビドラマ「ゴーイング マイ ホーム」が遺作となった。(田中雄二)

公開情報:『そして父になる』
9月24日(火)~27(金)全国先行ロードショー。
9月28日(土)新宿ピカデリー他全国ロードショー。
配給:ギャガ


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