【映画コラム】愛と皮肉とユーモアで障害者の性を描いた『セッションズ』
2013年12月7日
首から下が動かないという障害がありながら、大学を卒業し、詩人やジャーナリストとして活躍した実在の人物マーク・オブライエンの体験を基に映画化した『セッションズ』が6日から公開された。
6歳でポリオを患ったマーク(ジョン・ホークス)は、“鉄の肺”と呼ばれる巨大なカプセル型の呼吸器に体を横たえて生活しているが、決して人生を悲観してはいない。
それが証拠に、38歳の彼はヘルパーの若い女性に恋をしたことをきっかけに、愛する人と心身ともにつながりたいと願い、思い切ってセックス・セラピスト(ヘレン・ハント)の“セッション”を受けることを決意するのだ。
身体障害者の性を扱った話となれば際物めくところが常だが、本作はさにあらず。全編に愛と皮肉とユーモアをちりばめながら、マークの生き方を通して人間が持つ無限の可能性や挑戦することの大切さというテーマを浮かび上がらせていく。
また人生の痛みや悲しみを描きながら、それらを超えて“人間喜劇”として昇華させた点も新鮮に映る。そこには自身もポリオを患ったという監督・脚本のベン・リューインの心情が大きく反映されているのだろう。特にマークと関わった女性たちが勢ぞろいし、涙と笑いで彼の思い出を語るラストの葬儀シーンが余韻を残す。
CGを一切使わずに生身でマークを演じたホークスの熱演に加えて、体当たりの演技でアカデミー賞の助演女優賞候補となったハント、マークを温かく見守る神父を演じたウィリアム・H・メイシーの名演技も見どころだ。
ちなみに、本物のマークを描いた短篇ドキュメンタリー『Breathing Lessons: The Life and Work of Mark O’Brien』(96)はアカデミー賞を受賞し、本作は2012年のサンダンス映画祭で観客賞を受賞している。(田中雄二)
公開情報
『セッションズ』(原題:The Sessions)
12月6日(金)新宿シネマカリテほか、全国順次ロードショー(R18+)。
配給:20世紀フォックス映画
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