【映画コラム】 『パイレーツ~』シリーズを西部劇に移植した『ローン・レンジャー』

2013年7月27日 / 19:42

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 『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズを大ヒットさせた、製作ジェリー・ブラッカイマー、監督ゴア・ヴァービンスキー、主演ジョニー・デップのトリオが、新たに作り上げたアクション超大作『ローン・レンジャー』が8月2日から全国公開される。

 『パイレーツ~』シリーズは、従来の海賊映画の世界に、ディズニーランドのアトラクション「カリブの海賊」の要素を加えた点が新鮮だった。さらに、ヒーロー役のウィル・ターナーをオーランド・ブルームが演じ、ジョニーは凝ったメークで“陰の主役”であるジャック・スパロウを演じるという意表を突いた配役も功を奏した。

 本作は、そうしたノウハウを西部劇に移植。舞台を大海原から大西部へと移し、白い帽子に黒いマスクを付けたヒーロー、ローン・レンジャーと先住民の相棒トントの活躍を描く。今回もヒーロー役はアーミー・ハマーが演じ、ジョニーはスパロウ以上に凝ったメークを施してトントを演じている。

 若き検事ジョン・リードがいかにしてローン・レンジャーとなったのか、そしてトントが抱える過去のトラウマとは…凸凹コンビ成立の過程と鉄道敷設に伴うドラマが展開する。年老いたトントが見知らぬ少年に過去を語る形でストーリーが進行していく趣向も楽しい。

 もちろん本作の最大の見どころは、疾走する蒸気機関車上で繰り広げられる激しいアクションシーンやモニュメントバレーの圧倒的な景観に他ならない。今回は巨大なセットを組んで西部の町を再現し、蒸気機関車を実際に3台製作したという。西部劇の伝統的なアクションの一つである馬と蒸気機関車の並走も存分に見られる。

 さて、ローン・レンジャーのオリジナルはコミックで、その後、ラジオドラマを経てテレビシリーズが制作された。日本でも1958年からテレビ放送され大ヒット。勇ましい「ウィリアム・テル序曲」をバックに、ローン・レンジャーが愛馬を発進させる際の「ハイヨー、シルバー!」の掛け声や、トントの「キモサベ」(信頼する友の意)、「インディアン、うそつかない」というセリフは流行語にもなった。また、老人と愛猫の旅を描いた『ハリーとトント』(74)の猫の名前もここから取られている。本作は日米共になじみ深いキャラクターを現代によみがえらせたとも言えるのだ。

 さまざまな理由から一時は絶滅が危惧された西部劇だが、近年、コーエン兄弟監督の『トゥルー・グリット』(10)、ジョン・ファヴロー監督の『カウボーイ&エイリアン』(11)、クエンティン・タランティーノ監督の『ジャンゴ 繋がれざる者』(12)、そして本作と、形を変えつつも復活の兆しが見えるのがうれしい。(田中雄二)


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