【映画コラム】映画が未来につながる期待感を抱かせる『クロニクル』

2013年10月11日 / 14:48

(C)2011 Twentieth Century Fox

 全米で好評を得たSF映画『クロニクル』が9月27日から公開された。当初は首都圏30館での2週間限定上映の予定だったが、口コミで評判が広がり、12日からはTOHOシネマズ 梅田(大阪)、109シネマズ名古屋、TOHOシネマズ 天神(福岡)でも公開される。また都内の新宿シネマカリテでの続映も決定した。

 本作の舞台は米シアトル。学校にも家庭にも居場所のない孤独なアンドリュー(デイン・デハーン)、彼のいとこでしっかり者のマット(アレックス・ラッセル)、学園の人気者のスティーブ(マイケル・B・ジョーダン)の高校生3人組が謎の物体に触れたことから超能力を手に入れる。彼らは変異した自分たちの行動をビデオカメラで記録(クロニクル)していくのだが、何でも撮影して記録するというその姿勢は動画への依存症的なものを感じさせる。

 また本作は『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(99)などと同じく“ファウンド・フッテージ映画(撮影済みの映像が発見されたという設定の映画)”の体裁を取っているが、これらは録画機器の発達により、動画を撮ることが手軽になり、インターネットなどを通して公開することが一般化した社会状況を反映しているとも言える。

 前半は、超能力を使って女の子のスカートをめくり、空中を浮遊し、手品の腕前を披露するなど、ちょっとしたいたずらや冒険を楽しむ3人が映る。彼らはそれまで経験したことのない幸福感や高揚感を味わい、アンドリューは有頂天になるが、やがてスティーブの不慮の死をきっかけに物語は暗転していく。

 後半は、超能力を制御できなくなり怪物と化したアンドリューとそれを阻止せんとするマットによる、力を得た者同士の悲しい死闘が繰り広げられる。この前半と後半の明暗の描き分けが本作の面白さの核を成す。

 監督のジョシュ・トランクは出演者に大友克洋監督の『AKIRA』(88)とデビッド・リンチ監督の『エレファント・マン』(80)を見るように指示したという。またブライアン・デ・パルマ監督の『キャリー』(76)の影響もうかがえる。そこには超能力を持った者や異形の者が持つ屈折や悲しみという共通のテーマが流れている。

 本作のスタッフ、キャストに目を移すと、製作・脚本のマックス・ランディスの父は『狼男アメリカン』(81)などを監督したジョン・ランディス。まさにカエルの子はカエルだ。監督デビュー作となったトランクは、本作の評判を受けて、リブート(新)版の『ファンタスティック・フォー』の監督に決定した。

 また、アンドリュー役のデハーンは『欲望のバージニア』(12)のナイーブな青年役などで、若き日のレオナルド・ディカプリオの再来とも言われる注目株。2014年公開予定の『アメイジング・スパイダーマン2』で主人公ピーターの親友ハリー役に起用された。そしてオーストラリア出身のラッセルはリメーク版の『キャリー』(13)に出演した。

 まだ全員が20代という彼らの今後のキャリアを考えると、映画が未来につながっていくことへの期待感を持つことができる。(田中雄二)

公開情報
『クロニクル』
首都圏限定公開解除決定!大ヒット上映中!!
公式サイト:http://www.foxmovies.jp/chronicle/
配給:20世紀フォックス映画


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