【映画コラム】『終戦のエンペラー』と『31年目の夫婦げんか』が公開中のトミー・リー・ジョーンズ

2013年8月3日 / 20:01

『終戦のエンペラー』(C)Fellers Film LLC 2012 ALL RIGHTS RESERVED

 個性派俳優トミー・リー・ジョーンズが、連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーを演じた『終戦のエンペラー』が好調な興行成績を示している。メリル・ストリープと夫婦役を演じたコメディー『31年目の夫婦げんか』も公開中だ。今年は、この2作のほかにも、共和党議員を演じた『リンカーン』で4度目のアカデミー賞助演賞候補となるなど、老いてますます盛んなところを見せる。

 今回は、日本では缶コーヒーのCMの“宇宙人ジョーンズ”としても親しまれている彼の足跡をたどってみよう。

 1946年に米テキサス州で生まれたジョーンズは、ハーバード大で英文学を専攻。フットボール選手としてアイビーリーグの最優秀選手にも輝いたのだからまさに文武両道だ。ところが演劇の魅力に取り付かれた彼は俳優を志願し、演技を修業。『ある愛の詩』(70)の主人公の学生仲間役で映画デビューを果たすが、こわもてが災いしてなかなか役に恵まれなかった。

 やがて『アイズ』(78)の偏執狂的な刑事役や『歌え!ロレッタ愛のために』(80)の不器用だが心優しい夫役などで注目され始め、『JFK』(91)で演じた謎の人物クレイ・ショー役で初めてアカデミー賞助演賞候補となった。そして『沈黙の戦艦』(92)の切れた悪役で驚かせ、殺人容疑者を執念深く追いながら同情も示す『逃亡者』(93)のジェラード捜査官役でついにアカデミー賞助演賞を受賞する。

 以後は、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(94)の刑務所所長のような悪役から、『タイ・カップ』(95)のような癖のある実在の人物、そして無骨な男が喜劇を演じるギャップが面白い『メン・イン・ブラック』(97)のエージェントKなど、硬軟取り混ぜてさまざまな役柄を演じ、今やハリウッド屈指の名優と呼ばれる存在になった。

 ジョーンズは『終戦のエンペラー』の来日記者会見で「自分はマッカーサーには似ていないが、サングラスを掛けてコーンパイプをくわえたら何とかなるかなと思った」と気さくに語ったが、共演した西田敏行は「厚木飛行場に降り立つ直前のマッカーサーが抱いていた不安を見事に表現していた。さすがだと思った」と絶賛した。

 親日家としても知られるジョーンズは、東日本大震災復興支援CMでは「上を向いて歩こう」と「見上げてごらん夜の星を」のリレー歌唱に参加。また歌舞伎好きの彼は『終戦のエンペラー』で昭和天皇を演じた歌舞伎俳優の片岡孝太郎との共演をことのほか喜んだという。(田中雄二)


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