【映画コラム】イーストウッドの新たな試みではあるが…『15時17分、パリ行き』
2018年3月10日
2015年に欧州の高速鉄道タリス内で発生した銃乱射事件の犯人に立ち向かった3人の若者の姿をクリント・イーストウッド監督が描いた『15時17分、パリ行き』が公開中だ。

(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited, RatPac-Dune Entertainment LLC
ミュージカルの『ジャージー・ボーイズ』(14)、実録物の『アメリカン・スナイパー』(14)、『ハドソン川の奇跡』(16)と、80歳を過ぎてからのイーストウッドの旺盛な仕事ぶりには毎度驚かされるばかりだが、今回も、俳優ではなく事件の当事者が自分自身を演じ、実際に事件が起きた場所で撮影するという、新たな試みに挑んでいる。
実話を基に、映画的に、時系列を操作して描くという本作の手法は、『アメリカン・スナイパー』や『ハドソン川の奇跡』と同じで、「一般人や普通の人々が持つ、ここぞというときの素晴らしい直感力を描いた物語に強い共感を抱いている」と語るイーストウッド好みの題材でもある。
だが、今回は94分という短い時間の中で、事件そのものを描いたのはラスト近くの20分ほどに過ぎない。それよりも問題児扱いされた3人の子ども時代や、事件直前の3人のヨーロッパ旅行のスケッチを丹念に見せるという映画の運び方には、正直なところ戸惑いを覚えた。
イーストウッドとしては、あくまでも“普通の人々の物語”として、あるいは問題児がヒーローになる皮肉を描くことに重点を置いたのかもしれないが、同じ実録物の前2作に比べると違和感が残るのは否めない。
これまで監督としてさまざまなタイプの映画を撮ってきたイーストウッド。中には傑作とは呼べないものもあったが、変な話、そうした出来不出来の凸凹具合が彼の映画の魅力でもあった。そういう意味では、今回もあくまでも通過点であり、実験作の一つとして捉えるべきなのかもしれないが、後のない年齢を考えると、少しばかり心配になる。(田中雄二)
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