【映画コラム】セットで見ると理解が深まる『記者たち 衝撃と畏怖の真実』と『バイス』
2019年4月6日
2003年、アメリカ政府が“衝撃と畏怖”と名付けた軍事戦略であるイラク戦争が勃発。大手新聞社が政府に迎合する中、唯一「本当にイラクに大量破壊兵器は存在するのか?」と異を唱えたナイト・リッダーの記者たちの動静を、実話を基に正攻法に映画化したのが『記者たち 衝撃と畏怖の真実』だ。
今やイラク戦争は、01年の同時多発テロ後のアメリカを覆った異様な空気(愛国、報復、好戦)を巧みに利用して、政府が捏造(ねつぞう)した情報によって始まったとされる。このように、またもや過去の政府の失態を暴いた映画が登場してきたわけだが、こうした映画には、間接的ではあるが、今のトランプ政権に対する反意が込められていると思われる。
監督のロブ・ライナーがワシントン支局長役で出演し、ウディ・ハレルソン、ジェームズ・マースデン、トミー・リー・ジョーンズらが記者を演じているが、いつも記者はかっこよく描かれ過ぎると感じた。劇中「どうして記者なんかになっちまったんだろう」「『大統領の陰謀』(76)を見たからさ」というやり取りがあったが、映画が職業に関するイメージに多大な影響を与えることは否めない。
また、ライナーにとっては、リンドン・ジョンソン元大統領を描いた『LBJ ケネディの意志を継いだ男』(16)に続く社会派映画だが、今回は短くまとめ過ぎた感がある。それ故、経緯が分かりづらくなり、彼らが果たした役割や事の重大さが伝わり切らないところがあった。
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