【映画コラム】家族の在り方や描き方は多種多様『万引き家族』
2018年6月9日
祖母、父、母、叔母、息子、娘の六人家族。だが、その実態は、老婆の年金と、細々とした仕事、そして窃盗で生計を立てる、それぞれが訳ありの血のつながらない疑似家族。そんな彼らの日常を描いてカンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞した『万引き家族』が公開された。
是枝裕和監督は、これまでも、実際にあった子どもの置き去り事件を題材にした『誰も知らない』(04)、同じく子どもの取り違え事件のその後を描いた『そして父になる』(13)、また『海街diary』(15)の異母姉妹、『海よりもまだ深く』(16)の団地族や、別れた妻子、『三度目の殺人』(17)の父と娘の姿などを通して、家族とは? 血のつながりとは? 幸せとは? を問い掛け続けてきた。
本作の“血のつながらない疑似家族”という設定はいささか特異だが、これらの映画の発展形あるいは集大成として見ることもできる。
ところが、本作もそうだが、彼の映画は、劇映画とドキュメンタリーの狭間で家族というテーマを淡々と描いているようでありながら、同時に、物語の設定や俳優の演技も含めて、問題提起を狙った作為が見え隠れするところがある。
そして、最後は明確な結論を出さずに観客に判断を委ねるという手法は、それを余韻とする見方もあろうが、ある意味、観客への丸投げ的なものを感じて、もやもやが残る。それは、カンヌの常連であるダルデンヌ兄弟の諸作にも通じる点であり、だからこそ是枝映画はカンヌで受けがいいのかとも思う。
ただし、こうした是枝映画の作風に対する好みは分かれるところがあるだろう。本作にしても、擬似家族を構成する俳優たちや子役の達者な演技、音しか聞こえない花火を家族そろって見るシーンや、海水浴の情景など、心に残る場面も少なくはないのだが、感情移入することが甚だ難しい映画だという印象も受けた。
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