【映画コラム】通勤電車を舞台にした至極のサスペンス『トレイン・ミッション』と、リュック・ベッソンの自由奔放なイメージが爆発した『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』
2018年3月31日
今週は、米政府の極秘文書を巡る諸々を描いた『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』、元英国首相の伝記『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』、ロシアの女性スパイを主人公にした『レッド・スパロー』など、政治がらみの映画が相次いで公開された。そんな中、あえて娯楽に徹した2作品を紹介したい。
まずは『アンノウン』(11)、『フライトゲーム』(14)、『ラン・オールナイト』(15)に続く、ジャウマ・コレット=セラ監督、リーアム・ニーソン主演によるアクション映画の最新作『トレイン・ミッション』から。
定年間近で保険会社からリストラされた元刑事のマイケル(ニーソン)。失意の中、帰りの電車に乗った彼に謎の女が声を掛けてくる。それは「電車が終点に到着するまでに、100人の乗客の中からプリンという愛称の人物を見付け出せば、10万ドルを支払う」というもの。戸惑うマイケルだったが、妻子が人質に取られていることが分かり、依頼を受けざるを得なくなる。
冒頭でマイケルの毎日の通勤風景の積み重ねを見せることで、彼がごく平凡な男であることを強調し、普通の男が巻き込まれるサスペンス劇としての種をまく。その点、アルフレド・ヒチコック作品をほうふつとさせるが、通勤電車が舞台というアイデアが意表を突いて面白い。ちなみに原題の「The Commuter」とは通勤者のこと。そしてリストラされ、金に困ったマイケルが女の誘いに心を動かされるという設定も秀逸だ。
『フライトゲーム』の飛行機に続いて、今回は通勤電車の中で緊迫のアクションが展開していく。作家のスティーブン・キングが本作を「ヒチコックとアガサ・クリスティが交錯したような至極のサスペンス」と評したように、コレット=セラとニーソンのコンビネーションは今回も快調。『沈黙-サイレンス-』(16)や『ザ・シークレットマン』(17)で演技派に回帰したかと思わせたニーソンだったが、こういう映画のことも忘れていなかったのがうれしい。ラストにはスタンリー・キューブリック監督の『スパルタカス』(60)を思わせる感動のシーンも用意されている。
*“アルフレッド・ヒッチコック”と表記する場合もあるが、ここでは『記者ハンドブック』新聞用字用語集(共同通信社刊)に基づき、“アルフレド・ヒチコック”と表記している。
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