【映画コラム】ウディ・アレン流『ラ・ラ・ランド』の趣がある『カフェ・ソサエティ』

2017年5月7日 / 08:00
(C) 2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

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 御年81歳の名匠ウディ・アレンの最新作『カフェ・ソサエティ』が公開された。今回は監督、脚本のほかにナレーションもアレンが担当し、名ストーリーテラーの本領を遺憾なく発揮している。

 舞台は1930年代。ニューヨークに住む平凡なユダヤ人の青年ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)が、大物エージェントとなった叔父のフィル(スティーブ・カレル)を頼ってハリウッドを訪れる。ボビーは叔父の秘書のヴォニー(クリステン・スチュワート)に心を奪われ、やがて結婚を考えるが、彼女には重大な秘密があった…。

 ボビーを狂言回しにして、ハリウッドとニューヨークに集う、カフェ・ソサエティと呼ばれたセレブたちのゴージャスな姿を再現。30年代独特の色合いの中に、華麗なファッションに身を包んだ群像を映し込んだ名手ビットリオ・ストラーロの撮影に加えて、アレン作品には欠かせないジャズの名曲が彩りを添える。

 そんな本作のユニークな点は、ボビーと彼を取り巻く人々の人生や選択を通して、“もしもあの時…”という人生の別の可能性や選択への悔いを描き出したところにある。必ずしも一致しない夢と現実、かなわぬ恋を、甘く切なく、時に苦さも加えて描くのはアレンの得意技だが、今回は偶然、時を同じくして公開された『ラ・ラ・ランド』との共通性が目を引いた。

 『ラ・ラ・ランド』でヒロインを演じたのは、『マジック・イン・ムーンライト』(14)『教授のおかしな妄想殺人』(15)と近年のアレン作品に連続出演したエマ・ストーン。もし彼女が本作のヴォニー役を演じていたら、時代や設定は異なるものの、同じような題材を、老成した監督が撮るとこうなるのだ、ということが強調され、さらに面白さが増したかもしれないとも感じた。

 それが証拠に、後半、ニューヨークに戻ったボビーの急転直下の物語の展開などにアレンの名人芸が示される。相変わらずのしつこいユダヤネタ、映画ネタも、今回はディテールの面白さとしてプラスに作用させるなど、前作の不調から見事に復活したと言っても過言ではない。

 このアレンのほかにも、クリント・イーストウッド、山田洋次、降旗康男ら、80歳を超えても現役で映画を撮り続けている監督たちがいる。彼らの旺盛な創作力には本当に驚かされるばかりだ。
(田中雄二)


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