【映画コラム】政治家に対する報道のルールや、国民感情の変化について考えさせる『フロントランナー』
2019年1月26日
1988年の米大統領選にまつわる、ある事件の裏側を映画化した『フロントランナー』が2月1日から公開される。
舞台は1988年の米コロラド州。ジョン・F・ケネディの再来と言われ、大統領選挙の最有力候補=フロントランナーに躍り出たゲイリー・ハート(ヒュー・ジャックマン)。だがマイアミ・ヘラルド紙がつかんだスキャンダルが報道されると事態は一変する。
この事件は、日本ではあまりなじみはないが、アメリカでは、政治家に対する報道のルールや、候補者の政策よりも人柄を重視するという国民感情の変化のターニングポイントとなった事件として有名だ。
ジェイソン・ライトマン監督が、お得意のシニカルな視点を生かしながら、ハートを取り巻くさまざまな人々の群像劇として手際よく描き、アクションが得意なジャックマンが、今回は抑えた演技で、カリスマ政治家役を好演している。
ライトマン監督は、政治劇としては、いずれもロバート・レッドフォードが主演した『候補者ビル・マッケイ』(72)『コンドル』(75)『大統領の陰謀』(76)の他、テレビ界の裏側を描いた『ネットワーク』(76)を、群像劇としてはロバート・アルトマン監督の諸作を参考にしたのだという。そのためか、この映画、描いた時代は80年代後半なのに、どこか70年代の香りがするのだ。
また、原作・脚本のマット・バイは、執筆の動機を「ハートの物語が忘れられつつある一方で、物事の本質よりもスキャンダルが勝ってしまっている現状に、この物語は現実の問題としてつながっていると気付いたからだ」としながら、「現代では、候補者たちはエンターテイナーになり、スキャンダルを回避するスキルを身に付け、報道に対処するために徹底的にうそつきにならなければならない」とも語っている。
そうしたことを踏まえながら、もしハートが政策重視の観点から大統領になっていたら…と考えさせるこの映画にも、昨年公開された『ザ・シークレットマン』や『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』同様に、今のトランプ政権に対する不信感が反映されているのだろう。(田中雄二)
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