【映画コラム】今週公開の話題作を2本紹介『ビブリア古書堂の事件手帖』『ヴェノム』
2018年11月3日
今週公開された映画の中から、話題作を2本紹介しよう。まずは、三上延の原作小説を、三島有紀子が監督して映画化した『ビブリア古書堂の事件手帖』から。
就職浪人の五浦大輔(野村周平)は、祖母(渡辺美佐子)の遺品で、夏目漱石のサインが入った『それから』を、鎌倉のビブリア古書堂に持ち込む。店主の篠川栞子(黒木華)は筋金入りの古書マニアだったが、ひょんなことから大輔はこの店でアルバイトをすることになる。
現在と50年前の二つの恋を交差させて描きながら、『それから』に記されたサインと、太宰治の『晩年』の初版本を巡る謎を解いていく、という趣向だが、ミステリーとしては弱く、人物描写も軽いところが残念だ。
とは言え、大道具としての古書店、小道具としての古書、万年筆、原稿用紙、あるいは本をめくる音などで、本好きのつぼを刺激しながら、同時に、本以外のことには無頓着な“古書マニアの業”も描き込んでいるところは面白い。
ところで、今年の黒木は、映画では、本作のほかに、声優を務めた『未来のミライ』、時代劇の『散り椿』、樹木希林と共演した『日日是好日』、『億男』、ホラーの『来る』(12月7日公開)と、出演作はバラエティーに富み、ドラマも「西郷どん」、「獣になれない私たち」に出演するなど、大活躍を見せた。中でも本作の演技は、これまで、どちらかと言えば時代劇や古風な役が多かっただけに、新鮮なものとして映った。シリーズ化もありか。
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