【映画コラム】家族の絆について改めて考えてみたくなる『未来のミライ』
2018年7月21日
細田守監督のアニメーション映画最新作『未来のミライ』が公開された。
4歳の男の子くんちゃん(声=上白石萌歌)に妹ができる。ところが、両親(星野源、麻生久美子)の愛情を妹に奪われたと感じたくんちゃんは、ミライと名付けられた妹の存在を素直に受け入れることができない。
そんな中、くんちゃんは不思議な庭で、未来の妹(黒木華)、人間化した愛犬、幼い頃の母、若い頃の曽祖父(福山雅治)らと出会い、時空を超えた冒険を通して成長し、やがて妹を受け入れていく。
本作は、親子の相似、家族の絆が築かれていく様子、少年の通過儀礼、人生のループなどがテーマのファンタジーだが、細田監督自身の体験に裏打ちされたとも思える、日常の細やかな描写やせりふなどから、夫婦関係や子育ての“あるある映画”として見ても面白い。鉄道好きのくんちゃんが訪れる未来の東京駅のイメージも秀逸だ。
細田監督は「これまでの日本の家族観は何か違うなと思っていた。言わなくても分かり合えるのが家族だとか、同じところに住んでいるから分かり合えるんだとか。いや、逆でしょ、と。家族が一番分からないわけで。血やDNAの力で家族と、家族としてつながるのではなく、ちゃんと努力して、アイデンティティを自分の中で確認した上で関係性が生まれるはず。問題を解決するには、お互いの努力が必要」と語る。
その点では、血の絆のない“家族”を描いた是枝裕和監督の『万引き家族』ともつながるものがあるのかもしれないし、両作を見ると、家族の絆について改めて考えてみたくなる。
初めてきょうだいができた時、初めて自転車に乗れた時、自分はどんなふうに感じたのだろうと、過去の自分に聞いてみたくなるような映画。年を取るとこういう映画はとても切なく映る。甘く切ない山下達郎のエンディング曲「うたのきしゃ」も心に残る。(田中雄二)
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