【映画コラム】やっかいだけどいとおしい家族の姿を描いた『家族はつらいよ2』

2017年5月27日 / 15:18
(C)2017「家族はつらいよ2」製作委員会

(C)2017「家族はつらいよ2」製作委員会

 かつての『男はつらいよ』シリーズをほうふつとさせる、山田洋次監督お得意の「やっかいだけどいとおしい家族の姿」を、喜劇として描いたシリーズ第2弾『家族はつらいよ2』が公開された。

 三世代が同居する平田家では、前回の熟年離婚問題に代わって、高齢者ドライバーや無縁社会の問題が降りかかる。

 その中で、まるで寅さんのような、分からず屋の周造じいさん(橋爪功)と、妻(吉行和子)、長男夫婦(西村雅彦、夏川結衣)、長女夫婦(中嶋朋子、林家正蔵)、次男夫婦(妻夫木聡、蒼井優)が織り成す家族模様が傑作だ。観客は、彼らを見ながら「こういうことってあるよな」という親近感を抱くことになる。

 この8人の主要キャストは、『東京家族』(13)と前作(16)に引き続き、今回が3回目の顔合わせとなるだけに、息もぴったり。彼らが奏でる見事なアンサンブルは、『男はつらいよ』シリーズの車屋ファミリーとは違う、新たな家族像を構築している。特に、わがままで憎たらしいがどこか愛嬌(あいきょう)のある周造を演じる橋爪が絶品だ。

 ところで、山田監督が「人は、他人が混乱したり、うろたえている姿を見るのが好き。喜劇とは人間を欠点から見るということ」と語り、喜劇王チャールズ・チャプリンも「悲劇の裏に喜劇がある」と語ったように、もともと喜劇には残酷な側面がある。

 そう考えると、本作で描かれた周造の高校時代の同級生の下流老人(小林稔侍)の悲しい死も、見方によっては滑稽に映る。さらに、恵まれた老人が恵まれない老人に同情するという構図がいささか嫌味に見えるところもある。

 これは落語の世界にも通じる一種のブラックユーモアなのだが、それを優しく、温かい目で描くところが山田喜劇の真骨頂。特に死体の発見で家族会議がめちゃくちゃになるシーンは、よく出来た舞台劇を見るような気分にさせられる。パート3は周造版の『ホーム・アローン』とのうわさも…。ぜひ実現してほしいものだ。(田中雄二)


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