【映画コラム】松本清張の影響を感じさせられる『祈りの幕が下りる時』と『嘘を愛する女』
2018年1月27日
東野圭吾原作の『新参者』シリーズの完結編『祈りの幕が下りる時』が公開された。
今回は、東京の下町の安アパートで中年女性の絞殺死体が発見され、荒川の河川敷ではホームレスの焼身遺体が発見される。また同じ頃、新進の女性演出家(松嶋菜々子)が手掛けた舞台公演が行われる。この、一見、無関係とも思える出来事が微妙に絡み合い、引いては、主人公、加賀恭一郎(阿部寛)の過去や、行方不明となった母親の消息とも関係があることが明らかになっていく、というストーリーだ。
冒頭の、刑事たちが少ない痕跡を基に、“足”を使って事件の謎を追う姿を見ながら、松本清張原作の映画『砂の器』(74)を思い出したのだが、実は、事件の背後に潜む暗い悲しみも、甚だ清張的であった。
『砂の器』に登場する不幸な父と子が、ここでは父と娘に変わってはいるが、虐げられ、故郷を追われた彼らが旅をする姿、あるいは、やっとつかんだ栄光の前に、過去を知る人間が現れる、という設定は、明らかに『砂の器』を踏襲していると思える。
また、加賀と松宮(溝端淳平)の姿に、『砂の器』のベテラン刑事の今西(丹波哲郎)と若手の吉村(森田健作)の姿が重なって見えるところもあった。このあたり、福澤克雄監督に確かめてみたい気もする。
-
2018年1月20日
【映画コラム】昔のB級SF映画のにおいがして楽しい『ジオストーム』 -
2018年1月12日
【映画コラム】人間の持つ可能性の大きさを描いた『5パーセントの奇跡... -
2018年1月6日
【映画コラム】英米のカルチャーギャップが面白い『キングスマン:ゴー... -
2017年12月30日
【映画コラム】2017年映画ベストテン -
2017年12月15日
【映画コラム】今回の“裏主役”はルーク!『スター・ウォーズ/最後のジ... -
2017年12月9日
【映画コラム】夫婦の愛情劇+奇想天外な冒険ファンタジー『DESTINY 鎌... -
2017年12月2日
【映画コラム】演者の異なる古典劇を見るような楽しみがある『オリエン... -
2017年11月18日
【映画コラム】アメリカのカントリー賛歌の側面もある『ローガン・ラッ... -
2017年11月11日
【映画コラム】映画好きのつぼを刺激する『人生はシネマティック!』 -
2017年11月4日
【映画コラム】広がり続けるマーベルシリーズ『マイティ・ソー バトル... -
2017年10月28日
【映画コラム】前作からのファンは満足するが…『ブレードランナー2049』 -
2017年10月21日
【映画コラム】アメリカ映画の底力を感じさせる『バリー・シール/アメ... -
2017年10月7日
【映画コラム】果たして前後篇にする必要があったのか…『あゝ、荒野』前篇 -
2017年9月30日
【映画コラム】思わず彼女たちを応援したくなる『LOCO DD 日本全国どこ... -
2017年9月23日
【映画コラム】人はその才能でこそ判断されるべき『ドリーム』 -
2017年9月16日
【映画コラム】第三部への布石『エイリアン:コヴェナント』 -
2017年9月9日
【映画コラム】見るのではなく“体感する映画”『ダンケルク』 -
2017年8月26日
【映画コラム】映画化を勇気と見るか、無謀と見るかが分かれ道『関ヶ原』 -
2017年8月19日
【映画コラム】カーチェイス版の『ラ・ラ・ランド』か!?『ベイビー・...