【映画コラム】ほら話や寓話を聞いているような気分になる『ゴールデン・リバー』
2019年7月6日
第75回伊ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞し、第44回仏セザール賞では監督賞など4冠に輝いた異色西部劇『ゴールデン・リバー』が公開された。
舞台は、1851年のゴールドラッシュに沸く米西部。シスターズ姓の殺し屋兄弟イーライ(ジョン・C・ライリー)とチャーリー(ホアキン・フェニックス)は、提督を名乗るボスの命令で、川中の金を発見するための薬品の化学式を知るウォーム(リズ・アーメド)と連絡係のモリス(ジェイク・ギレンホール)という、姿を消した2人の行方を追う。
米・仏・スペイン、ベルギー、ルーマニアの合作であるこの映画の監督はフランス人のジャック・オーディアール。このところの、異邦人が撮った何本かの西部劇には、正直なところストーリーにも風景にも違和感を覚えさせられたのだが、本作はひと味違った。
まず、兄弟がオレゴンからサンフランシスコに向かう道中を描くロードムービー的な要素が強いことが最大の理由だが、撮影のブノワ・デビエが35ミリのフィルムで撮ることにこだわったためか、主にスペインやルーマニアでロケが行われたにもかかわらず、昔のマカロニウエスタン(イタリア製西部劇)に比べれば、背景が本物の米西部らしく見えるのも大きなポイントだ。
また、ストーリー的には、金を巡る4人の男たちの物語と聞いて、見る前は、ジョン・ヒューストン監督の『黄金』(48)のような仲間割れをする話を想像したのだが、いい意味で裏切られた。ブラックユーモアに満ちているので、途中から民間伝承の西部のほら話=トール・テールや寓話(ぐうわ)を聞いているような気分になるのだ。ここでは詳しく書けないが、実はみんな夢の中だったのか…と思えるような不思議なラストシーンも用意されている。
パトリック・デウィットの原作『シスターズ・ブラザーズ』は、そもそも“シスター兄弟”というタイトルが冗談のようだし、イギリスでは、ミステリーでありながらユーモア賞の候補になっているぐらいだから、トール・テール的な雰囲気の中で、映画以上に、金欲が生む人間の滑稽さを描いているのではないかと思われる。
オーディアール監督は、映画化に当たって、原作の兄弟の設定を入れ替え、ウォームをヨーロッパからアメリカに移住してきた社会主義者の前身として描くなど、原作を大幅に改変してはいるが、トール・テールや寓話的な雰囲気だけは残した。そこがこの映画を西部劇たらしめている理由だと感じた。
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