【映画コラム】ロドリゲスが協力して完成させたキャメロン印の映画『アリータ:バトル・エンジェル』
2019年2月23日
日本のSF漫画「銃夢(ガンム)」(木城ゆきと)を、製作ジェームズ・キャメロンと監督ロバート・ロドリゲスが実写映画化した『アリータ:バトル・エンジェル』が公開された。キャメロンに原作を紹介したのは『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)のギレルモ・デル・トロ監督だという。
大戦後の世界は、天空に浮かぶユートピア都市ザレムと、荒廃した地上のアイアンシティに分断されていた。アイアンシティに暮らす医師のイド(クリストフ・ヴァルツ)は、ある日クズ鉄の山の中から少女の頭部を発見する。彼女は300年前に作られた最強兵器=サイボーグだった。イドは彼女をアリータ(ローサ・サラザール)と名付け、娘のように接するが…。
遠い未来の世界を舞台に、記憶を失ったサイボーグ少女の成長と恋、そして闘いを描く。
キャメロンが『アバター』(09)で新たな扉を開けた3D映像が格段に進歩し、もはや違和感を抱かせない。加えて、キャメロンが自身の娘を重ね合わせて創造したというアリータをはじめ、登場人物がきちんと描かれているので、映像やアクションだけが際立つという失敗も犯していない。
そんな本作の大きなテーマは、アリータのアイデンティティーの模索と、父と娘との関係といったところか。アリータを見ていると、何だかこちらもイドと同じように、父親のような気分になってくるから不思議だ。
そのキャメロンの脚本を映画として完成させたロドリゲスは「今回は自分では完成させることができなかったキャメロンの映画を、彼のスタイルを引き継いだ形で私が完成させようと思った。自分がこれまで作ってきた映画は見る人を限定するようなところがあったので、『タイタニック』(97)や『アバター』のような、あらゆる人に向けた映画を作るにはどうすればいいのかをキャメロンに聞いた」という。
するとキャメロンは「SFやファンタジーの大作映画を作る場合は、リアリティーに基本を置くことが特に重要だ」と答えたという。
それを受けてロドリゲスは「今回は、ブルーバックなしでちゃんとセットを作り、ロケも実際にその場所に行って、本物の俳優を使って撮った。そうすることで、観客は、よりキャラクターを信じることができるし、ストーリーにも没入できる。それは自分にとっては新しくエキサイティングな方法だった。キャメロンはとてもいい先生だった」と語る。2人の間に見事なキャッチボールがあったのだ。
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