【映画コラム】ファンタジーの力を借りて、子どもたちの心の成長を描いた『バーバラと心の巨人』と『ルイスと不思議の時計』
2018年10月12日
ファンタジーの力を借りて、子どもたちの心の成長を描いた2作が相次いで公開された。まずは、一人の風変わりな少女が主人公の『バーバラと心の巨人』から。
世界を滅ぼすという伝説の巨人の来襲を信じる少女バーバラ(マディソン・ウルフ)は、奇異な言動で周囲から孤立する。だが、彼女の行動の裏にはある秘密があった…。
本作は、製作・クリス・コロンバス、デンマーク出身のアンダース・ウォルター監督によるダークファンタジーだが、前半と後半でこれほど印象が変わる映画も珍しい。前半は暗い画調の中、バーバラが周囲に対して取る態度の悪さにいらいらさせられ、やるせない気分になる。ところが後半、バーバラが抱える屈折の理由が分かると、一転、彼女がけなげに見えて、いとおしくすら感じられるようになる。このあたり、原作・脚本のジョー・ケリーの作劇が見事だ。
また、本作は、同じく今年日本で公開された『ワンダー 君は太陽』を陽とすれば、その裏返しの陰として、対をなすところがある。主人公が少年と少女という違いこそあれ、どちらもハンディのある思春期前の子どもと周囲との関わり、あるいは子どもたちの心の成長を真摯(しんし)に描いているからだ。
ところで、この映画には野球ファンにとってはたまらないエピソードが描かれている。バーバラは巨人退治の武器を「コヴレスキー」と名付けているが、そのコヴレスキーとは、20世紀初頭に実在したメジャーリーグの投手ハリー・コヴレスキーのことなのだ。
なぜ、100年以上も前の投手の名前がこの映画で重要な意味を持つのかは、ここでは書けないが、その意味を知ったときは、『フィールド・オブ・ドリームス』(89)のムーンライト・グラハムのエピソードを思い出した。わざわざこのエピソードを入れ込んだケリーは相当な野球マニアであるに違いない。
-
2018年10月6日
【映画コラム】“西洋版の落語”『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘... -
2018年9月29日
【映画コラム】“黒澤映画の影”が見え隠れする『散り椿』 -
2018年9月22日
【映画コラム】ジョンソンの存在を際立たせるためのアイデアの集積が見... -
2018年9月15日
【映画コラム】“忘れていた大切なものを取り戻すこと”を描いた『プーと... -
2018年9月8日
【映画コラム】本当の意味での奇跡は人との出会いにある『泣き虫しょっ... -
2018年9月1日
【映画コラム】当時の興奮がよみがえる『ボルグ/マッケンロー 氷の男... -
2018年8月25日
【映画コラム】良くも悪くも“劇映画”になっている『検察側の罪人』 -
2018年8月11日
【映画コラム】男たちが間抜けに見えるところが肝心な『オーシャンズ8』 -
2018年8月4日
【映画コラム】何があっても、イーサンはイーサンだ!『ミッション:イ... -
2018年7月28日
【映画コラム】ヒーローもつらいよ『インクレディブル・ファミリー』 -
2018年7月21日
【映画コラム】家族の絆について改めて考えてみたくなる『未来のミライ』 -
2018年7月14日
【映画コラム】オリジナルへの回帰的な側面もある『ジュラシック・ワー... -
2018年7月7日
【映画コラム】ワールドカップの余勢を駆って『アーリーマン ダグと仲... -
2018年6月30日
【映画コラム】あくまでスピンオフとして楽しむべきなのか…『ハン・ソロ... -
2018年6月23日
【映画コラム】端々にウディ・アレンらしさが感じられる『女と男の観覧車』 -
2018年6月16日
【映画コラム】涙が頬を伝うが、ほほ笑みながら見ていられる『ワンダー... -
2018年6月9日
【映画コラム】家族の在り方や描き方は多種多様『万引き家族』 -
2018年6月2日
【映画コラム】ひたすら“赤いクソ野郎”の活躍を見るための映画『デッド... -
2018年5月26日
【映画コラム】専業主婦の労働問題を“喜劇”の中で描いた『妻よ薔薇のよ...