【映画コラム】古典劇の4度目の映画化だが…『アリー/ スター誕生』
2018年12月22日
レディー・ガガ主演、ブラッドリー・クーパーが共演と監督を兼任した『アリー/ スター誕生』が公開された。
世界的なロックスターのジャクソン(クーパー)は、ある日、小さなバーで歌うアリー(ガガ)と出会う。アリーの才能を見抜いたジャクソンは彼女を表舞台へといざなう。やがてスター同士となった2人は結婚するが…。
実はこの話は、これまでに3度映画化されている。最初のウィリアム・A・ウェルマン監督、ジャネット・ゲイナー、フレドリック・マーチ主演の『スタア誕生』(37)と、2作目のジョージ・キューカー監督、ジュディ・ガーランド、ジェームズ・メイスン主演の『スタア誕生』(54)は、映画界の新旧スター同士の夫婦の変転を描き、2作目はガーランドの主演だけに、ミュージカル仕立てだった。
3度目がフランク・ピアソン監督、バーブラ・ストライサンド、クリス・クリストファーソン主演の『スター誕生』(76)で、舞台は音楽業界(歌手同士)に変わり、一種の女性の自立ドラマになっていた。今回はこの映画を踏襲している。
という具合に、同じ話を描きながら、作られた時代の雰囲気によってドラマは微妙な変化を見せる。ところが、スターの存在、華やかさの裏にある悲劇、人生の変転という縮図はどの時代にも当てはまる。だから繰り返し映画化されるのだろう。
今回は、ガガの主演作ということで、無名時代に、ニューヨークのクラブでダンサーをしながら生計を立てていたという、彼女自身の姿を反映させたような内容になっており、彼女の圧倒的な歌声が最大の見どころとなる。また、監督も兼ねたクーパーが低い声のロックシンガー役で達者な歌や演奏も披露し、大健闘を見せる。
ところが、なぜか心に響かなかった。その最たる理由は、甚だ個人的なことだが、同日の、しかも先に『ボヘミアン・ラプソディ』を見てしまったことにある。もちろん、クイーンとガガに対するこちらの思い入れの違いが影響していることは否めないが、理由はそれだけではない。
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