【映画コラム】ディズニー映画の名作、55年ぶりの続編『メリー・ポピンズ リターンズ』
2019年2月2日
ディズニー映画の名作『メリー・ポピンズ』(64)の55年ぶりの続編となる『メリー・ポピンズ リターンズ』が公開された。監督は『シカゴ』(02)などのロブ・マーシャル。
時代設定は前作から20年後。大人になったジェーンとマイケルのバンクス姉弟(エミリー・モーティマー、ベン・ウィショー)のもとに、魔女のメリー・ポピンズ(エミリー・ブラント)が再び現れ、前作に引き続き、親子3代にわたるバンクス家のピンチを救う。
妻を失い、3人の子どもたちの世話に悩み、おまけに借金の抵当として家まで奪われる羽目になったマイケル。そんな中、彼は純粋な子ども心(遊び心)を失うが、メリー・ポピンズや子どもたちのおかげで立ち直るという話は、昨年公開された『プーと大人になった僕』(18)のクリストファー・ロビン(ユアン・マクレガー)にも通じるものがある。どちらも昔のイギリスが舞台というのも共通点だ。
さて、カイト(たこ)、スノードーム、隣の海軍提督、労働者たちの群舞シーン、実写とアニメーションとの融合、そして前作のヒーロー、ディック・バン・ダイクの登場(92歳のダンスがすごい!)など、前作へのオマージュが随所に見られるし、前作のジュリー・アンドリュースの“母性”とは違い、ちょっと上から目線でクールなメリー・ポピンズ像を構築したエミリーも、歌に踊りに頑張っている。
エミリーによれば「ジュリーのメリー・ポピンズは不滅の存在で、まねをするなどおこがましいと思ったので、今回は、前作よりも原作のイメージに近づけ、私たちなりの“次章のメリー・ポピンズ”にした」という。
ただ残念なのは、前作に比して人物描写に哀愁が感じられないところ。例えば、前作の父親ジョージ(デビッド・トムリンソン)同様に、今回は息子のマイケルがいろいろと悩むのだが、心理の明暗がきちんと描かれていないから、人物像にメリハリがなく、深みが感じられない。
原作に近づけたのなら、原作者パメラ・L・トラバースの心情を描いた『ウォルト・ディズニーの約束』(14)を引き合いに出すまでもなく、物語のポイントは苦悩する父親を救うことにあるはずなのだ。
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