【映画コラム】精神や技術の継承をテーマにした『カーズ/クロスロード』

2017年7月15日 / 18:07

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 擬人化された自動車キャラクターが活躍する、ピクサーアニメーションシリーズの第3作『カーズ/クロスロード』が公開された。

 今回は主人公のレーシングカー、ライトニング・マックィーン(声:オーウェン・ウィルソン)の力の衰えに加えて、若手の台頭、事故、引退問題などが発生。マックィーンの人生のクロスロード(岐路)が描かれる。

 前半は、マックィーンの苦悩を象徴するかのように、重苦しい雰囲気が漂い、画調も暗く、3作の中で最もシリアスな印象を受けた。

 だが、マックィーンと新たに彼のトレーナーとなったクルーズ(クリステラ・アロンゾ)が、伝説のレーサー、スモーキー(クリス・クーパー)を捜す道中の美しい風景が徐々に雰囲気を変えていく。

 そして、スモーキーたちとの特訓を通して、スモーキーからドックへ、ドックからマックィーンへ、そしてマックィーンからクルーズへと続く、精神や技術の継承こそが今回の大きなテーマなのだと気付かされる。だからこそ、クルーズの活躍が希望の象徴となっていくのだ。こうした流れを見ながら、何と大人のドラマであることかと驚かされた。

 ところで、マックイーンの名で真っ先に思い浮かぶのは、名優スティーブ・マックイーンに他ならない。自らもカーレースに出場した彼は、刑事ドラマ『ブリット』(68)で激しいカーチェイスを繰り広げ、ル・マン24時間耐久レースを描いた『栄光のル・マン』(71)に主演するなど、車との縁はとても深かった。また、第1作の『カーズ』(06)には彼の遺作となった『ハンター』(80)を思わせるシーンもあった。

 おまけに、ドックの声を演じたポール・ニューマンはスティーブの終生のライバルであり、こちらもカーレーサーとして大いに鳴らしたことでも知られる。

 というわけで、ライトニング・マックィーンの名前は、競走馬のメジロマックイーン同様、当然スティーブから取られたものだと思い込んでいたのだが、実は、亡くなったピクサーのアニメーターのグレン・マックィーンに由来するとのこと。彼の死の直前に、仲間たちが『カーズ』の主役に名前を使うことを誓ったのだという。

 まあ、こちらも“いい話”ではあるのだが…。と、少々話題がコースアウトしたが、アーカイブを利用したドック=ニューマンの声が聞けるのも今回の見どころの一つだ。(田中雄二)


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