【映画コラム】くしくも実現した“マン対決”『ファースト・マン』と『アクアマン』
2019年2月9日
まずは、人類史上初めて月面に立った男、ニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)を主人公に、デイミアン・チャゼル監督が、米宇宙計画の裏側を描いた『ファースト・マン』から。
本作の舞台となる1960年代は、まだ携帯電話もパソコンもなかった時代。そのためチャゼル監督は、可能な限りアナログ感を表現しながら、観客に当時の現実を体験させることを主眼に置き、ドキュメンタリーのスタイルを採用したという。おかげで、こちらもアポロ11号の月面着陸の衛星中継を夢中になって見た、子どもの頃の思い出がよみがえってきた。
また「無限の宇宙(月)と平凡な日常(家庭の台所)が並立する作品に」をモットーに、宇宙開発のスペクタクルよりも、アームストロングらの内面を深く掘り下げることに腐心して描いている。日常的に現れる月、アームストロングが見上げる月など、地球から見た、異なる月のカットを印象的に映すのも、それを象徴する。
脚本は『スポットライト 世紀のスクープ』(15)『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(17)など、実録物の名手ジョシュ・シンガー。今回も、宇宙計画の暗部や反対運動の様子なども取り入れながら、その手腕を遺憾なく発揮している。
終始抑えた演技のゴズリングのほか、妻役のクレア・フォイ、同僚役のジェイソン・クラーク、上司役のカイル・チャンドラー、そしてアポロ11号のクルー、バズ・オルドリン役のコリン・ストールと、マイク・コリンズ役のルーカス・ハースらも好演を見せる。
余談だが、米宇宙計画を描いた映画としては、この映画の前日談として『ライトスタッフ』(83)と『ドリーム』(16)、後日談として『アポロ13』(95)、番外編として架空話の『カプリコン・1』(77)があり、それらと並行して本作を見れば、米宇宙計画を、さらに多角的に知ることができると感じた。
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