【映画コラム】端々にウディ・アレンらしさが感じられる『女と男の観覧車』
2018年6月23日
82歳のウディ・アレン監督の新作『女と男の観覧車』が公開された。
舞台は1950年代のニューヨーク、コニー・アイランド。遊園地でウエートレスとして働くジニー(ケイト・ウィンスレット)は、再婚した夫(ジム・ベルーシ)と、自身の連れ子と共に暮らしていたが、海水浴場でライフガードのアルバイトをする大学生のミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)と浮気をする。
元女優のジニーは平凡な毎日に失望し、ミッキーとの未来を夢見るが、そこに夫の娘のキャロライナ(ジュノー・テンプル)が現れて…。
原題の「Wonder Wheel」は、ジニーの家の窓から見えるコニー・アイランドの観覧車の名前。眺めはいいが、いつも同じ場所を回転しているだけで、決して別の場所に行くことはできない、という意味で、ジニーの立場と重なり、象徴的なものとして映る。
そんな本作は、撮影を名手ビットリオ・ストラーロが担当し、かつて『ワン・フロム・ザ・ハート』(82)で、セットと照明を使ってラスベガスを“人工の美の街”として表現したように、今回も、光と影、暖色と寒色のコントラストを生かして50年代のコニー・アイランドの雰囲気を見事に再現している。
ところで、ウィンスレットは、これまでのイメージを覆すような熱演を見せるが、安定を願いながら刺激を求め、真実の愛に憧れながら刹那的な恋に溺れ、ここではないどこかに、もっといい人生が待っているはずと思い込み、自分勝手な行動を取るジニーの姿に、感情移入ができるか否かが、本作に対する好き嫌いの分かれ目になるだろうと思う。このような矛盾と皮肉に満ちた、一筋縄ではいかない登場人物は、アレン映画に共通するものである。
また、かつてアレンは『アニー・ホール』(77)で、自ら観客に向って話し掛けることで“第四の壁”(観客と画面の間に存在する透明な壁)を破ってみせたが、今回もミッキー役のティンバーレイクが、観客に語り掛けながら、狂言回し的な役割を果たしている。そのおかげで、全体的には暗い話であるにもかかわらず、悲喜劇を見ているような印象を受ける。
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