【映画コラム】小品の佳作を2本『search サーチ』と『ライ麦畑で出会ったら』
2018年10月27日

 今週は小品の佳作と呼ぶにふさわしい2本の映画を紹介しよう。まずは、全編がパソコンの画面で展開する『search サーチ』から。

『search サーチ』

 本作の主人公は、最近妻を亡くしたばかりの韓国系アメリカ人のデビッド・キム(ジョン・チョー)。彼の16歳の娘マーゴット(ミシェル・ラー)が、突然姿を消す。行方不明事件として捜査が開始されるが、家出なのか、誘拐なのかも全く分からない。マーゴットのSNSを探ったデビッドは、そこに自分の知らない娘の姿を見ることになる。

 キム一家の歴史を紹介する映像のモンタージュに始まり、全編がパソコンの画面で展開するというアイデアが秀逸。われわれが、普段いかにパソコンやスマホに依存しているのかが見えてきて、怖くなるところもある。

 本作が、監督デビュー作となったインド系アメリカ人のアニーシュ・チャガンティは27歳。「スティーブン・スピルバーグ、M・ナイト・シャマランに次ぐ、映画の天才登場!」と騒がれているようだが、『激突!』(71)を25歳で、『ジョーズ』(75)を29歳で撮ったスピルバーグや、『シックス・センス』(99)を29歳で撮ったシャマランもそうだったが、いくら斬新なアイデアがあっても、それを生かすストーリーテリングがよくなければ話にならない。

 その点では、本作も巧みに書かれた脚本が最大のポイント。見かけは斬新だが、中身は、アルフレッド・ヒッチコックの諸作を思い起こさせるような、オーソドックスなミステリーの作劇法をきちんと踏襲しているのだ。サンダンス映画祭で観客賞を受賞したのも納得できる。

 
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