【映画コラム】後期高齢者応援ムービー『ジーサンズ はじめての強盗』

2017年6月24日 / 15:04

(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

 年金の打ち切り、住宅ローンの返済、体の不調…。次々と生じる難問に、切羽詰まった3人の“ジーサン”が、起死回生の一策として銀行強盗を計画するという、喜劇『ジーサンズ はじめての強盗』が公開された。

 その3人を演じるのは、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、アラン・アーキンという、いずれ劣らぬ80歳超えの名優たち。“後期高齢者応援ムービー”のキャッチコピーにたがわぬ名演とチームワークを披露する。

 また、彼らの仲間の1人に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズのドクことクリストファー・ロイド、彼らを取り調べる刑事にかつての青春スター、マット・ディロンと脇も豪華。そして往年の美人女優アン=マーグレットも衰えぬ美貌で花を添える。俳優出身のザック・ブラフ監督の嫌味のない手堅い演出が彼らの魅力を引き立てている。

 ところで、本作の原題は「Going in Style=堂々と行こう」で、実はリメーク作である。オリジナルは日本では劇場公開されず、『お達者コメディ/シルバー・ギャング』(79)のタイトルでビデオ発売されるにとどまった。だが、1979年当時よりも、社会の高齢化が進み、さまざまな老人問題が深刻さを増している現代に、時宜を得た素材としてよみがえったことになる。

 今回新たに脚本を執筆したセオドア・メルフィは、同じく老人の再生を描いたコメディー『ヴィンセントが教えてくれたこと』(14)の脚本も書いている。彼の脚本の特徴は、基本はひねりが利いた喜劇であるにもかかわらず、登場人物が直面する厳しい現実と危機感を誠実に描くところ。それ故、本作でも、観客は違和感なく3人の犯罪の成功を願うようになる。

 また、フリーマンが「私たちが楽しんで演じたことが観客にも伝わると思う」と語るように、3人が“計画”を通して再び生きる活力を得ていく様子は、見ているこちらまで楽しくなってくる。そして、予想外の展開に感心しながら、ラストの粋な処理に思わずニヤリとさせられるという具合だ。

 もちろん現実がこんなに甘くないのは百も承知だが、せめて映画を見る時ぐらいはいい気分になりたい。そんな思いを満足させてくれる傑作コメディー。ソニー・ロリンズの「セント・トーマス」など挿入される曲もしゃれている。(田中雄二)


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