【映画コラム】 夫婦の視点から映画製作の舞台裏を描いた『ヒッチコック』

2013年3月30日 / 18:37

(C)2012 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.

 『レベッカ』『裏窓』『めまい』『北北西に進路を取れ』『鳥』など数多くの名作を残し、“サスペンスの神”と呼ばれた映画監督アルフレド・ヒチコック。彼の晩年の傑作である『サイコ』の製作の舞台裏を描いた『ヒッチコック』が4月5日から公開される。

 本作は、ヒチコックの映画作りを陰から支え続けた妻アルマとの夫婦愛と葛藤、あるいはヒチコック自身の心の屈折や劣等感、そして老いに対する焦りなど、これまであまり語られることがなかった事柄を赤裸々に描いている。

 まずは、特殊メークで見事にヒチコックに変身したアンソニー・ホプキンスとアルマ役のヘレン・ミレンという大ベテラン同士が繰り広げる丁々発止の演技合戦が大きな見どころ。さらに、スカーレット・ヨハンソンとジェシカ・ビールという今の女優が、往年の美人女優ジャネット・リーとベラ・マイルズを演じている点にも注目だ。

 ところで、ヒチコックが活躍した時代のハリウッドには、プロダクション・コード(映画製作倫理規定)があり、セックスやバイオレンスに関するシーンを厳しく規制していた。映画製作者は表現の自由をめぐり映倫との闘いを余儀なくされたのだ。ところが、ヒチコックが作るサスペンスやスリラーには暴力や性の描写は不可欠なもの。そこで彼は、規制の網の目をかいくぐるために、見せ方に工夫を凝らし、後に“ヒチコック・スタイル”と称された演出技法を生み出した。

 そして、全てを見せないことで逆に見る側の想像力をかき立てたばかりでなく、映画に品格を与え、ユーモアを漂わせることにも成功した。本作でも、ヒチコックが映倫側や観客に示す“だましのテクニック”がユーモラスに描かれている。そうした時代背景を頭に置きながら本作を見ると、『サイコ』の登場が、当時はいかに衝撃的だったのかということが分かって興味深いし、より表現が自由になった今の映画との違いを考えてみるのも面白い。(田中雄二)

*本作のタイトルのように“アルフレッド・ヒッチコック”と表記する場合もあるが、ここでは『記者ハンドブック』新聞用字用語集(共同通信社刊)に基づき、タイトル以外は“アルフレド・ヒチコック”と表記している。

公開情報
4月5日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー
配給:20世紀フォックス映画


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