【映画コラム】 映画俳優・二宮和也の“プラチナデータ”

2013年3月16日 / 17:22

 東野圭吾のベストセラー小説を映画化したSFサスペンス『プラチナデータ』が16日に公開初日を迎えた。本作は全国民のDNAデータ(プラチナデータ)が管理され、犯罪捜査に利用される近未来を舞台に、自らが作り上げたシステムによって殺人事件の容疑者となり、追われる身となった天才科学者と彼を追う刑事の姿をスリリングに描いていく。

 本作で多重人格の天才科学者を演じたのは、人気アイドルグループ嵐の二宮和也だ。彼は俳優としても着実に成長してきている。今回は彼の映画俳優としての歩みを振り返ってみよう。

 二宮の俳優デビューは、嵐への加入前に出演した、松本清張原作のテレビドラマ「天城越え」(98)。当時14歳の彼は、思春期の少年の屈折した心理を巧みに演じて好評を博した。そして嵐の一員として出演した堤幸彦監督の『ピカ☆ンチ LIFE IS HARD だけど HAPPY』(02)での映画デビューを経て、演出家の蜷川幸雄が監督した『青の炎』(03)で、義父を殺害する17歳の少年を演じて注目を浴びた。そして、二宮の演技にほれ込んだ蜷川は、自身が演出する舞台「シブヤから遠く離れて」(04)の主役に彼を抜てきするのだ。

 続いて二宮は、クリント・イーストウッド監督のハリウッド映画『硫黄島からの手紙』(06)のオーディションに合格し、準主役の西郷一等兵役を得る。イーストウッドは『青の炎』の二宮の演技を見て起用を決めたという。どうやら二宮は大御所から好かれる“何か”を持っているようだ。

 さらに、男女が逆転した『大奥』(10)では時代劇に、また『GANTZ』(11)ではSFアクションに挑んだが、演出家の三谷幸喜が「彼には屈折した役がよく似合う」と評するように、これまでの出演映画ではそうした役どころが多いのが少々気に掛かる。テレビのバラエティー番組での彼を見れば、軽いタッチのコメディー映画も十分にこなせるはずだと感じる。そんな彼も見てみたいと思うのだ。(田中雄二)


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