【映画コラム】まさかの実話を描いた『アメリカン・ハッスル』

2014年2月1日 / 18:15

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 『ザ・ファイター』(10)、『世界にひとつのプレイブック』(12)と好調が続くデビッド・O・ラッセル監督が、1979年に起きた収賄スキャンダル「アブスキャム事件」を基に映画化した『アメリカン・ハッスル』が1月31日から公開された。

 アブスキャムとは“アラブの悪行”を意味する言葉。FBI捜査官がアラブの大富豪と身分を偽り、おとり捜査を行ったことから事件にこの名が付いたという。また本作の“ハッスル”は詐欺の意を表している。

 クリーニング店を経営しながら贋作(がんさく)の美術品を売りさばく詐欺師のアーヴィン(クリスチャン・ベール)は、元ストリッパーのシドニー(エイミー・アダムス)と意気投合し、コンビを組んで大成功を収める。だがFBI捜査官のリッチー(ブラッドリー・クーパー)に捕まった2人は、放免と引き換えに、汚職政治家とマフィアを一網打尽にするためのおとり捜査への協力を依頼される。

 彼らに、カジノの建設にからんだ汚職に手を染める人のいい市長(ジェレミー・レナー)とエキセントリックなアーヴィンの妻(ジェニファー・ローレンス)を加えた5人が本作のメーンキャストとなる。終盤にはあっと驚く役でロバート・デ・ニーロも加わる。

 いずれも感情過多で少々イカれたキャラクターを体現した彼らの人間くさい演技が素晴らしい。生きるためにうそを重ねる彼らの姿は滑稽だがどこか哀愁も漂う。

 ちなみに、ベールとアダムスは『ザ・ファイター』に、クーパーとローレンスとデ・ニーロは『世界にひとつのプレイブック』に出演し、ベールとローレンスはそれぞれアカデミー賞の助演賞と主演賞を受賞した。

 本作でもベールとアダムスが主演賞、クーパーとローレンスが助演賞の候補になっている。常にエキセントリックな演技が要求される“ラッセル映画”に出ることがアカデミー賞受賞への近道か。

 さて、この手の映画はだます相手が大物で設定が大仕掛けになるほど面白くなる。本作もFBIと詐欺師にだまされる大物政治家やマフィアの様子をコミカルに描き、事件が予想外に変化し大きくなっていく様を、畳み掛けるような演出で見せることで面白さが倍加した。

 また昨年のアカデミー賞で作品賞などを受賞した『アルゴ』(12)同様、実際にFBIが立案したいささか間抜けな作戦を掘り起したという着眼点の良さも光る。

 また本作は「名前のない馬」(アメリカ)、「グッバイ・イエロー・ブリックロード」(エルトン・ジョン)、「007 死ぬのは奴らだ」(ポール・マッカートニー&ウイングス)などを挿入歌に使った音楽とド派手なファッションで70年代の雰囲気を巧みに再現している。

 本作の後も『ラッシュ/プライドと友情』(2月7日公開)、『ラヴレース』(3月1日公開)と、70年代を描いた映画の公開が続く。こちらも楽しみだ。(田中雄二)


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