【映画コラム】アメリカ軍が抱えるジレンマや矛盾を象徴した『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』

2014年4月26日 / 19:12

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 マーベル・コミックを原作にしたスーパーヒーローシリーズの第2弾『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』が19日から公開された。

 前作『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』(11)の舞台は、第2次大戦下の1940年代。アメリカ対ナチス・ドイツという昔の戦争映画の形式を現代流にアレンジしながら、レトロな雰囲気も生かして楽しませてくれた。

 本作は、70年の眠りから覚めて現代に復活し“アベンジャーズの戦い”を経て、国際平和維持組織「シールド」の一員となったキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース(クリス・エバンス)の姿を描いている。

 アベンジャーズの戦いから2年後、シールドの長官フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)が狙撃され、スティーブとブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)も組織から追われる身となる。やがてスティーブは組織の内部に強大な敵がいることを知る。

 今回は新キャラクターとして、元落下傘兵で退役軍人のサム(アンソニー・マッキー)がファルコンとして仲間に加わり、謎の暗殺者ウィンター・ソルジャーがキャプテン・アメリカの前に立ちはだかる。さらに名優ロバート・レッドフォードの生涯初の悪役も見ものだ。

 さて、キャプテン・アメリカはマイティ・ソー、アイアンマン、ハルクという「アベンジャーズ」の中では最も真面目で人間味のあるキャラクターとして知られる。また星条旗をモチーフにしたマスクとスーツ、武器は円形の盾というのもいかにも古めかしい。本作ではそんな彼が現代の生活になじめていないことが大きなテーマとなる。

 ちなみに本作の副題の“ウィンター・ソルジャー(冬の兵士)”とはベトナム戦争の帰還兵による反戦集会からきている。

 シールズや自身の役割に疑問を持ち始めたスティーブ、戦地で心に傷を負った元兵士たちのカウンセラーをしているサム、そして本作に登場するウィンター・ソルジャーも戦争の犠牲者だ。

 つまりこの副題は「われわれは本当に正しいことをしているのか」、「われわれの他に誰が国を守るのか」というアメリカ軍が抱えるジレンマや矛盾を象徴しているとも言える。現代のヒーロー物は単純な正義対悪という図式だけでは語れない屈折を含んでいる。(田中雄二)


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