【映画コラム】ゴジラを“荒ぶる神”として描いた『ゴジラ GODZILLA』

2014年7月26日 / 15:36

(C) 2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC

 オリジナルの『ゴジラ』(54)の公開から60年。その後、さまざまな形で映画化され、日本が世界に誇るキャラクターとなったゴジラもめでたく還暦を迎えたことになる。そんな中、“ハリウッド製”としては2度目の映画化となった『ゴジラ GODZILLA』が25日から公開された。

 いきなり、これは日本なのか?と思わされる奇妙な都市が登場するが、本作には地震、原発事故、津波と、東日本大震災をほうふつさせる描写があるため、あえて場所が特定できないように配慮したためと思われる。

 また、我々日本人のイメージからすれば今回のゴジラはいささか太り過ぎの感があるが、前回1998年版の“巨大なイグアナ”よりは随分ましになったとも言える。日本からは渡辺謙が芹沢猪四郎博士役で出演。この名前にピンとくる人はかなりのゴジラファンだろう。

 謎の地殻変動によって日本某所の原発が崩壊するが、実はこれは巨大生物ムートーの仕業だった。そして核エネルギーを吸い取って成長し、各地を破壊しながら移動を始めたムートーの動きと呼応するかのようにゴジラが現れる。

 オリジナルのゴジラは水爆実験によって眠りを覚まされ、放射能を帯びて現れるところに“核の恐怖”が表現されていたのだが、今回は米ソの水爆実験はゴジラを抹殺するために行われていたとし、ゴジラをバランスの崩れた自然界を修正するために現れた“荒ぶる神”のような存在として描いている。GODZILLAというつづりからも分かるように、ゴジラは欧米では一種の“神獣”として捉えられている。

 またこうした設定は、本家の『ゴジラ』シリーズよりも、むしろ『大魔神』シリーズや「平成ガメラ」シリーズに近いテイストだ。思えば本作のムートーはガメラと敵対したギャオスのイメージとも重なる。製作陣は『ゴジラ』シリーズに限らず、日本のあらゆる特撮映画を参考にしたのだろう。

 英国出身の新人監督ギャレス・エドワーズは、日本、ハワイ、サンフランシスコと舞台を移しながら、いかにもハリウッド調の家族の絆の物語を展開させる器用さを示す一方で、オリジナルのモノクロ映像を意識した暗い色調の中で怪獣同士のバトルを繰り広げさせるという趣味性も発揮している。

 世界中にいるゴジラファンの全てを納得させる映画を作ることはもとより至難の業。今回もその描き方に賛否は分かれるだろうが、ハリウッドがゴジラを核の恐怖を超えた自然への畏敬の念の象徴として描いた点に注目したい。(田中雄二)


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