【映画コラム】山によって生きる力を得る人々を描く『春を背負って』

2014年6月16日 / 20:31

(C)2014「春を背負って」製作委員会

 日本を代表する映画カメラマンの木村大作が『劔岳 点の記』(09)に続いて撮り上げた監督第2作『春を背負って』が14日から公開された。

 木村監督は『用心棒』(61)などの黒澤明監督作で撮影助手を務めた後、森谷司郎監督の『日本沈没』(73)『八甲田山』(77)『海峡』 (82)といった大作、南極ロケを行った『復活の日』(80)、降旗康男監督、高倉健主演、舞台は北海道という『駅 STATION』(81)『鉄道員(ぽっぽや)』(99)などで撮影を担当し、さまざまな伝説を残してきた。

 そして70歳にして監督デビューを果たした『劔岳 点の記』は、明治時代の実話を基に、日本地図を完成させるために剣岳の登頂に挑んだ男たちを 描き、自然の厳しさや山と対峙(たいじ)する人間の姿を前面に押し出して好評を博した。

 本作は、父(小林薫)の不慮の死をきっかけに山小屋を継ぐ決心をしたトレーダーの青年(松山ケンイチ)が、山での生活に悪戦苦闘しながら成長し ていく姿を通して、山によって生きる力を得る人々を描くという明るいタッチのものへと変化した。キャッチフレーズは“地上3千メートルでの家族の 物語”だ。

 とは言え、刻々と移り変わる山の表情、大自然の中の人間など、CGではない本物の絶景を捉えた映像の素晴らしさは前作となんら変わりはない。こ れは木村監督を筆頭に、スタッフやキャストが命懸けで山に登って撮影した努力のたまもの。まさに彼らの心情が画面からにじみ出てくる。

 父子役の松山と小林をはじめ、蒼井優、豊川悦司といった俳優たちが苦悶(くもん)の表情を浮かべ、ふーふー言いながら登っていく姿。一転、頂上 にたどり着いたときに見せる晴れ晴れとした笑顔や達成感に満ちた表情は決して演技ではない。本作にはそうしたドキュメンタリーを見るような面白さ もある。(田中雄二)


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