【映画コラム】 映画の“撮り直し”を生かした『オール・ユー・ニード・イズ・キル』

2014年7月12日 / 17:11

(C) 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BMI) LIMITED

 マット・デイモン主演の『ボーン~』シリーズを製作・監督したダグ・ライマンが、トム・クルーズを主演に迎えて撮ったSF大作『オール・ユー・ニード・イズ・キル』が4日から公開された。

 ザ・ビートルズの「オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ=愛こそはすべて」という曲があるが、本作のタイトルを訳せば「殺しこそはすべて」となるか。日本の桜坂洋のライトノベル『All You Need Is Kill』が原作だからこれは当然のタイトルだとも思われるが、実は本作の原題は「エッジ・オブ・トゥモロー=明日との境目」という。なぜこのタイトルかと言うとトムが扮(ふん)する主人公は“今日を繰り返すだけで決して明日が来ない”からだ。

 粗筋は、謎の侵略者からの攻撃で滅亡寸前の世界。同じ日を無限に繰り返す“時のループ”に巻き込まれた兵士ケイジ(トム)と彼を鍛える最強の女性兵士リタ(エミリー・ブラント)が侵略者に立ち向かう。世界の命運はこの2人に委ねられるというもの。

 どちらのタイトルがいいかは別にして、最初は戦闘能力ゼロで全くやる気のないケイジが、戦い→死→生き返りを数え切れないほど繰り返していくうちに歴戦の兵士となっていくのが本作の見どころ。もちろん現実はこうはいかないので何度もリセットしてやり直せるコンピューターゲームをほうふつさせる面白さがある。

 また、同じ状況が何度も繰り返される時のループは、映画の“テーク~(撮り直し)”が生かせる格好の素材。過去には『恋はデジャ・ブ』(93)『タイムアクセル12:01』(93)『ミッション:8ミニッツ』(11)といった名作もある。小説ではケン・グリムウッドの『リプレイ』がお薦めだ。(田中雄二)


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