【映画コラム】のび太のラブストーリーと友情の物語 『STAND BY ME ドラえもん』

2014年8月9日 / 20:19

(C) 2014「STAND BY MEドラえもん」製作委員会

 藤子・F・不二雄原作の『ドラえもん』から「のび太の結婚前夜」や「さようなら、ドラえもん」などの7編を一つのストーリーとしてまとめ、3DCGで映画化した『STAND BY ME ドラえもん』が8日から公開された。

 『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズや『永遠の0』(13)の山崎貴が、『friends もののけ島のナキ』(11)に続いて八木竜一と共同で監督をしている。

 正直なところ、原作コミックや通常のアニメ版を見慣れた者にしてみれば、初めのうちはCGで描かれたキャラクターに違和感を覚える。ところが、慣れてくると次第に映画の中に引き込まれていく。これは映像の力もさることながら原作と脚色の良さ故という気もする。

 本作の中心に描かれるのは、のび太としずかちゃんのラブストーリーと、のび太とドラえもんの友情だ。「あの子(しずか)がいるから僕は生きていけるんだよ」というのび太の必死のせりふからも、彼はしずかちゃんのことが本当に大好きなんだなあということが良く分かって、その思いが成就することを願わずにはいられなくなる。

 また本作には、のび太とドラえもんが未来に行って“のび太青年”と出会う場面があるが、のび太青年はのび太少年に「ドラえもんはきみの…僕の子どものころの友達だからね。ドラえもんとの時間を大切にしろよ」と語り、居眠りをしているドラえもんを見るだけで我慢する。これは原作にはないシーンだが、やがてのび太とドラえもんにも別れが訪れることを示唆しており、見ていてちょっと切なくなるし、“時間SF”の秀逸な場面としても記憶に残る。

 タイトルの『STAND BY ME~』は、米映画『スタンド・バイ・ミー』(86)の影響に加えて、のび太の正直な気持ちも表しているのだろう。自動車のCMでのび太青年を演じている妻夫木聡が本作では声優を務めている。

 ところで、原作者の藤子は「SFとはサイエンスフィクションのことではなく、日常の中に突然非日常が飛び込んでくるような“少し、不思議”なこと」と語っていた。本作は複数の短編を合わせて一つの長編として再構築することで、『ドラえもん』が優れたSFであることをあらためて証明したとも言える。(田中雄二)


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