【映画コラム】ボリウッドの新たな可能性を示した『チェイス!』

2014年12月6日 / 14:43

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 製作費、興収ともにインド映画歴代ナンバーワンを記録したアクション大作『チェイス!』が、5日から公開された。

 サーカスの天才トリックスターでありながら、腕利きの金庫破りという裏の顔も持つ主人公サーヒルと、インドの敏腕刑事コンビが、シカゴを舞台にアクロバチックな追跡劇を繰り広げる。

 サーヒルを演じたのは、その確かな演技力から“ミスター・パーフェクト”とも称されるアーミル・カーン。年間千本以上の作品を製作する映画大国インドの国民的スターだ。

 製作・主演した『ラガーン』(01)がアカデミー賞外国語映画賞の候補となり、『きっと、うまくいく』(09)では44歳で、学歴偏重社会にユーモアで立ち向かう大学生役を演じ、劇中歌の「Aal Izz Well=アール・イーズ・ウェル」とともに日本でも広く認知された。

 本作では、『きっとうまくいく』のコミカルな演技からは一転して、強さと繊細さを併せ持った難役に挑戦し、ハードなアクションや踊りも披露している。

 そのカーンが「この映画は、インド映画をシカゴで撮り、ハリウッド映画のスタッフが協力したという意味で、とても象徴的な作品」と語るように、本作の製作の背景には、今、ハリウッドとボリウッド(インドの映画産業全般を差す俗称)が、双方向で影響し合っているという事実がある。

 つまり本作は、『スラムドッグ$ミリオネア』(08)に始まり、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(12)から、最新作『ミリオンダラー・アーム』、『マダム・マロリーと魔法のスパイス』へと続く、現在のハリウッドにおけるインド志向の映画と対を成すような作品だと言えるのだ。

 もちろんインド映画十八番の歌と踊りの場面も満載。ボリウッドの新たな可能性を示した作品をぜひ体感してほしい。(田中雄二)


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