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うそのような本当の話を描いたティム・バートン監督の最新作『ビッグ・アイズ』が23日から公開された。
1960年代、アメリカのモダンアート界で大きなブームを巻き起こした絵画“ビッグ・アイズ”シリーズ。だが、全ての絵は“作者”のウォルター・キーンではなく、無名の妻であるマーガレットが描いたものだった。やがてマーガレットの告白で事態はスキャンダルへと発展し、“真の作者”をめぐる裁判が起きる。
バートン監督が実話を基に映画化した本作は、“史上最低”の映画監督を描いた自作『エド・ウッド』(94)にも通じるものがある。コメディータッチの中に、アイデンティティーの問題や才能の有無に関するテーマが内包されているからだ。
マーガレットは口下手で内気、一方、絵は描けないが、口八丁手八丁のウォルターには人を引き付ける魅力があり、プロデューサーや企画者としての才能にもたけているというところが、人生の皮肉を表すようで面白い。
そうした二人の姿は、去年話題になった佐村河内守氏と新垣隆氏との関係をほうふつとさせ、芸術家(クリエーター)としての才能と、それを売り込むプロデューサー的な才能は別の物なのかと思わされたりもする。
“ゴーストぺインター”のマーガレットを演じて、ゴールデングローブ賞の主演女優賞を2年連続で受賞したエイミー・アダムスはもちろん、ウォルターの屈折を見事に表現したクリストフ・ヴァルツの好演も見逃せない。特に、弁護士を立てずに自分で自分の弁護をする姿が傑作。
また、通常はダークな色調を好むバートン監督には珍しく、今回はピンクを中心に、60年代の妙に明るい色調を再現しているのも見どころだ。(田中雄二)