【映画コラム】今こそ、「生きていることの幸せ」を描いた映画を見よう(part1)『素晴らしき哉、人生!』『カイロの紫のバラ』『デーヴ』
2020年4月23日
新型コロナウイルスの感染拡大の中、大変な思いをしている人も多い。だが、こんなときだからこそ「生きていることの幸せ」を描いた映画が心の糧になることもある。2回にわたって、見終わった後、少しだけ幸せな気分になれる映画を紹介しよう。
『素晴らしき哉、人生!』(46)
理想主義者のジョージ(ジェームズ・スチュアート)は、田舎町を牛耳る悪徳資本家のポッターに対抗し、父が経営していた、貧しい庶民に味方する住宅金融会社を引き継ぐ。愛妻メアリー(ドナ・リード)や良き隣人たちに恵まれたジョージだったが、不運が重なって町から一歩も出ることができない。そしてクリスマスイブに大金を紛失したことから人生に絶望し、自殺を決意する。そんな彼の前に見習い天使のクラレンスが現れ、ジョージが存在しなかった世界を見せる…。
もちろん実際にはあり得ない話なのだが、ここからラストまでの怒濤(どとう)の展開を見れば、タイトル通りの人生の素晴らしさや意義に気づき、人が人に与える影響力の大きさ、家族や友人の大切さが身にしみるはず。悪夢から覚めたジョージと一緒に、観客も「生きていることの幸せ」を実感できるラストシーンが素晴らしい。気分が落ち込んだときにこそ見たい、名匠フランク・キャプラによる奇跡の映画だ。
『カイロの紫のバラ』(85)
舞台は不況下の1930年代。失業中の夫を抱え、ウエートレスとして働くセシリア(ミア・ファロー)の唯一の楽しみは映画を見ること。そのセシリアが映画の中から飛び出してきた探検家(ジェフ・ダニエルズ)と恋に落ちて…という、夢と現実のはざまを描いたウディ・アレン監督のラブファンタジー。せめて映画を見ている間は、つらい現実を忘れて幸せな気分に浸りたいという観客の願望を具現化している。
セシリアは現実から逃避し、スクリーンの中に夢を見ているのだが、その中で毎回同じ演技をさせられている探検家たちからすれば、変化のある現実世界はうらやましく見えるという矛盾が笑いを誘う。映画に憧れ、映画と恋をし、その恋に破れながらも、映画によって再び生きる希望を見つけていくセシリアをファローが好演。夫に暴力をふるわれ、現実を悲観し、泣いてばかりいた彼女が、探検家との出会いを通して、たくましい女性に変身するラストが痛快だ。
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