【映画コラム】Netflixオリジナル作品からアカデミー賞を振り返る
2021年4月30日
4月25日(日本時間26日)に行われた第93回アカデミー賞は、車上生活を送る高齢女性労働者を描いた『ノマドランド』が作品、監督(クロエ・ジャロ)、主演女優(フランシス・マクドーマンド)の各賞を受賞したが、動画配信サービスNetflixオリジナルの16作品が、38部門の最多ノミネートをされたことも話題となった。今回はNetflixオリジナル作品からアカデミー賞を振り返ってみたいと思う。
1927年のシカゴを舞台に、“ブルースの母”と呼ばれた歌手マ・レイニーと、彼女を取り囲むミュージシャンたちの葛藤を描いた『マ・レイニーのブラックボトム』は、レイニーを演じたビオラ・デイビスと、野心家のトランペッターを演じたチャドウィック・ボーズマンがそれぞれ主演賞候補となり、43歳で急逝したボーズマンの死後受賞が最有力とされたが、受賞したのは83歳の大ベテラン、『ファーザー』のアンソニー・ホプキンスだった。また、美術賞も逸したが、衣装デザイン賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞は受賞した。
オーソン・ウェルズ監督・主演の映画『市民ケーン』(41)でアカデミー賞脚本賞を受賞した脚本家“マンク”ことハーマン・J・マンキウィッツを主人公に、名作が生まれるまでの壮絶な舞台裏を描いた『Mank/マンク』は、作品賞、監督賞(デビッド・フィンチャー)、主演男優賞(ゲイリー・オールドマン)、助演女優賞(アマンダ・セイフライド)など、最多11部門にノミネートされた。モノクロ画面、モノラル音声などを使って当時の雰囲気を再現した力作だったが、受賞は撮影賞と美術賞にとどまった。
ベトナム戦争の反対運動に端を発し、抗議デモを企てたとされ逮捕、起訴された7人の男(シカゴ・セブン)の衝撃の裁判を実話に基づいて描いた『シカゴ7裁判』は、エディ・レッドメイン、ジョセフ・ゴードン・レビット、サシャ・バロン・コーエン、マイケル・キートン、マーク・ライランスなど、名優たちが演技合戦を繰り広げ、作品、助演男優(コーエン)など、6部門にノミネートされたが、惜しくも無冠に終わった。
南北戦争の終結から5年後、各地でニュースを読み伝える仕事をしながら旅をする、軍人キッド(トム・ハンクス)と、偶然出会った少女が、旅をしながら次第に心を通わせていく様子を描いたポール・グリーングラス監督の『この茫漠たる荒野で』は、ハンクスの西部劇初出演も話題となり、撮影賞、美術賞など、4部門にノミネートされたが、こちらも無冠に終わった。
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