【映画コラム】複雑なクライムサスペンスを見事に99分でまとめた『サイレント・トーキョー』

2020年12月4日 / 10:00

 「アンフェア」シリーズの脚本などで知られる秦建日子が、ジョン・レノンの「Happy X-mas (War Is Over)」に影響を受けて執筆した小説を映画化した『サイレント・トーキョー』が公開された。

(C)2020 Silent Tokyo Film Partners

 クリスマス間近の東京・恵比寿のショッピングモールで爆破テロが発生。中継に向かったテレビ局の契約社員・来栖(井之脇海)と、たまたま買い物に来ていた主婦の山口アイコ(石田ゆり子)が騒動に巻き込まれる。そんな中、騒動を見詰める、謎の男(佐藤浩市)の姿があった。

 そして、犯人は来栖を使って、さらなる犯行予告を動画サイトにアップさせる。「これは、戦争です」と語る犯人の要求は、テレビの生放送での首相(鶴見辰吾)との対談。要求が受け入れられない場合、渋谷・ハチ公前付近に仕掛けた爆弾を爆破させるという。渋谷署の刑事・世田(西島秀俊)らが必死で犯人を探る中、捜査線上に、IT起業家・須永(中村倫也)の存在が浮かび上がるが…。

 突如、東京を襲った連続爆破テロに翻弄(ほんろう)される人々の姿を、登場人物それぞれの目線で克明に描いた本作の監督は、「SP」シリーズなどで知られる波多野貴文。

 爆弾をめぐるスリル、警察の捜査、真犯人を明かす謎解きとその裏に隠された秘密、といった複雑な要素が絡むクライムサスペンスを、テレビドラマで培った構成力を発揮して、見事に99分でまとめている。

 巨大セットで再現された渋谷の街並みも見ものだが、事件の真相を知った後で聴く「Happy X-mas (War Is Over)」には感慨深いものがあった。(田中雄二)


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