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『ランボー』(82)から38年。『ロッキー』シリーズとともに、シルベスター・スタローンの俳優人生を支えてきた『ランボー』シリーズの完結編『ランボー ラスト・ブラッド』が公開された。まずは、シリーズの流れから振り返ってみたい。
社会から孤立したベトナム帰還兵ジョン・ランボー(スタローン)と、流れ者というだけで彼を排除しようとする田舎町の保安官(ブライアン・デネヒー)との壮絶な戦いを描いた『ランボー』の原題は「ファースト・ブラッド=最初の血」。
1970年代から80年代にかけて、盛んに作られた「ベトナム戦争によるアメリカの傷」を描いた映画の一本で、望まぬ闘いを強いられた孤独な男の悲しさを描いた渋いアクション映画という印象だった。
ところが、ランボーがベトナムの捕虜収容所に潜入する『ランボー/怒りの脱出』(85)、かつての上司(リチャード・クレンナ)をアフガニスタンまで救出に行く『ランボー3/怒りのアフガン』(88)では、話が大仰になり、ランボーは筋骨隆々の戦闘マシンに変身。
ソ連のボクサー・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)と対戦するためにロッキーがモスクワに乗り込む『ロッキー4/炎の友情』(85)とともに、当時のレーガン政権のスローガン「力による平和」を反映させたのでは、とやゆされた。
そして、20年ぶりの続編となった『ランボー/最後の戦場』(08)では、ランボーがミャンマーの軍事政権に捕らわれた国連使節団の救出に向かう様子が描かれたが、もはや時代遅れの感は否めなかった。
さて、前作から11年を経て製作された『ランボー ラスト・ブラッド』のランボーは、いまだにベトナム戦争のトラウマに悩まされながらも、故郷アリゾナの牧場で、古い友人のマリアとその孫娘のガブリエラと共に“家族”として穏やかな生活を送っているという設定。
ところが、ガブリエラがメキシコの人身売買カルテルに拉致される。愛する“娘”を奪われたランボーは元グリーンベレーとしてのスキルを総動員し、カルテル一味への復讐(ふくしゅう)を企てる。
タイトルからして、原点回帰を目指したことがうかがえるが、残念ながらこの映画は、メキシコの扱いのひどさも含めてストーリー展開が雑で、アクションも残忍なだけでカタルシスもなく、見ながら暗い気持ちになってくる。
昨年、アメリカで公開された際には、脚本や生々しい暴力シーンが、メキシコに対する人種差別や外国人嫌悪につながるとして、非難されたという。
監督のエイドリアン・グランバーグは、同じくメキシコを舞台にしたメル・ギブソン主演の『キック・オーバー』(12)では、ひねりを利かせてなかなか面白く仕上げていたのだが、今回はちょっといただけない気がした。