【映画コラム】今度の舞台は雨が降り続く東京『天気の子』

2019年7月20日 / 14:32

 『君の名は。』(16)を大ヒットさせた新海誠監督の新作アニメーション映画『天気の子』が公開された。

(C)2019「天気の子」製作委員会

 天候の調和が狂い、雨が降り続く東京。離島から家出し、東京にやってきた高校生の帆高(声:醍醐虎汰朗)は、雨をやませる能力を持つ少女・陽菜(声:森七菜)と出会う。

 精緻な風景描写の中、少年と少女の恋を描くという骨子は『君の名は。』と同じだが、背景は彗星(すいせい)の衝突から天候不順に、ヒロインはみこから“晴れ女”に、東京の舞台は四ツ谷から新宿、代々木へと変化している。最も違うのは、「君の名は。」の主人公たちが超常現象に対して受け身だったのに比して、本作の帆高と陽菜は、自らの意志で“選択”をするところだ。

 新海監督自身が「彼らの走り抜いた先のエピローグを、観客がどう受け止めてくれるかは分からない。賛否さまざまな意見を頂くかもしれない」と述べているように、新海監督の新たな挑戦を観客がどう受けとめるのかに興味が湧く。また、同時期に公開されたピクサーアニメの『トイ・ストーリー4』が、やはり主人公の“選択”をテーマにしていたことも興味深い。

 ところで、『君の名は。』では舞台となった場所を実際に巡る“聖地巡礼”がブームとなったが、本作では、JR代々木駅近くにある代々木会館が重要な役割を果たしている。

 同会館は昭和30年代に建てられた雑居ビルだが、テレビドラマ「傷だらけの天使」(74)で、主人公の木暮修(萩原健一=ショーケン)が、ここの屋上のペントハウスに住んでいるという設定で有名になった。実は筆者も放送当時、“聖地巡礼”で訪れたことがある。そのショーケンが今年亡くなり、建物の解体も決まったと聞いた。

 だから、本作で同会館が映ったときには、あまりのタイミングのよさに思わず驚きの声を上げてしまった。その意味では、本作は東京の貴重な映像記録としての側面もある。ちなみに屋上に鳥居はなかったはずなのだが…。(田中雄二)


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