【映画コラム】宇宙飛行士の内面に重点を置いた『アド・アストラ』

2019年9月23日 / 14:38

 ブラッド・ピット演じる宇宙飛行士のロイが、太陽系の彼方で消息を絶った父(トミー・リー・ジョーンズ)と、彼が残した“ある謎”の答えを探るために宇宙の果てへと旅立つ様子を描いた『アド・アストラ』が公開中だ。

(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

 宇宙に一人取り残されたジョーンズ、そのかつての同僚役でドナルド・サザーランドも出ていると聞いて、見る前は2人が出演したクリント・イーストウッド監督の『スペース カウボーイ』(00)を思い浮かべたのだが、さにあらず。本作は、宇宙を舞台に、父と子の相克を描いた一種の心理劇だった。

 その点は、宇宙空間でのスペクタクルよりも、宇宙飛行士の内面に重点を置いた『2001年宇宙の旅』(68)から、最近の『ゼロ・グラビティ』(13)『インターステラー』(14)『ファースト・マン』(18)などの系譜に連なると言ってもいいだろうし、地球外生命の存在の有無、父と子の相克というテーマではロバート・ゼメキス監督の『コンタクト』(97)も思い出される。

 ピットも、本作のテーマについて「存在価値を見失った男の葛藤と自分探しの旅。その深遠な人間のミステリーを象徴するのが宇宙だ。主人公は銀河系の彼方で自身自身と向き合わなければならない。映画の魅力はそうした人間の葛藤にスポットを当てられることにある。僕はそこに引かれる」と語っている。

 また、監督のジェームズ・グレイによれば、本作を作る上で、フランシス・フォード・コッポラ監督の『地獄の黙示録』(79)を参考にしたとのこと。このところ『ある決闘 セントヘレナの掟』(16)『キングコング: 髑髏島の巨神』(17)と、『地獄の黙示録』を意識して作られた映画が続く点には興味深いものがある。

 とは言え、本作の最大の見どころは、やはり、映画スターとしてのピットの存在感と宇宙の景観だろう。

 今回はプロデューサーも兼ねたピットは「実際に海王星には行けないので、いかにリアリティーを出すかを考えた。あまりCGに頼らず、昔ながらのスタイルで撮ったので、アナログとCGをブレンドしたような形になった。その分、体験的なものになったので真実味が出た」と胸を張る。

 
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