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前回、前々回と、これまで2回にわたって「新型コロナウイルスの感染拡大の今こそ見たい映画」を紹介したが、今回はペストと宇宙という観点から作られた映画を紹介しよう。
エリア・カザン監督の『暗黒の恐怖』(50)は、肺ペストのまん延を防ぐため、公衆衛生局の医師(リチャード・ウィドマーク)とベテラン警部が、保菌者となった殺人事件の犯人たちの居所を探る3日間を、セミドキュメンタリータッチで描いたもの。
およそ70年前の映画なので、医療体制や疫病に対する知識などは、もちろん今とは雲泥の差があるが、保菌者を探すサスペンスには目を見張るものがある。
ルキノ・ビスコンティ監督の『ベニスに死す』(71)は、ペストがまん延する1911年のベニスを舞台に、初老の作曲家(ダーク・ボガード)の美少年への恋を軸にして、そこに退廃と美、老いと若さ、生と死といったテーマを描き込んだ。マーラーの交響曲第5番アダージェットが効果的に使われている。
こうした、疫病のまん延に仮託して人間の心理や不条理を描く、という点では、アルベール・カミュの小説『ペスト』の舞台を現代に移して描いたルイス・プエンソ監督の『プレイグ』(92)もある。