「自分のやるべきことを全うしたという気持ちです」渡部豪太(西郷吉二郎)【「西郷どん」インタビュー】

2018年10月14日 / 20:50

-その一方で、弟の信吾(錦戸亮)は吉之助と行動を共にしていましたね。

 単なる役割の問題です。自分は兄と約束した家のことがある。それは自分にしかできないことだけど、下の弟2人は、大きくなったら藩のため、世のために外で働いてこいと。だから、「信吾ばかり外に出やがって」みたいな気持ちではありません。信吾が武勇伝を語るような場面もありましたが、それも吉二郎は「大事な情報収集」ぐらいに考えていたのではないかと。

-そんな吉二郎が守ってきた西郷家には、妻の園(柏木由紀)や吉之助の妻・糸(黒木華)といった人たちが増えていきましたね。

 糸さんも園も、本当によくできた人たちです。(川口)雪篷(石橋蓮司)さんのせりふにもありましたが、家は“城”。吉二郎にとって家族が増えるということは、そこに仲間が加わるという心強さがあったのではないかと。ただ、雪篷さんはお酒ばかり飲んでいますけど(笑)。あと、忘れてはならないのが熊吉(塚地武雅)。いつも優しく支えてくれる熊吉がいなかったら、西郷家は成り立たなかったでしょう。あるとき、撮影が終わってふと見たら、ハンガーにボロボロの衣装が掛かっていたんです。思わず「これ、衣装ですか?」と聞いてみたら、それが熊吉の衣装でした(笑)。あんな衣装で支えてくれていたんだなぁと…。

-吉二郎にとっては、園との結婚も大きな転機になりました。演じる柏木由紀さんとの夫婦の距離感はどのように作っていきましたか。

 柏木さんは、大河ドラマはもちろん、時代劇も初めてだったらしく、ものすごく緊張しているように見えたので、できるだけ話し掛けるようにしました。私が「平清盛」(12)で初めて大河ドラマに出演したのが、ちょうど今の柏木さんと同じ年ぐらいの頃。大河ドラマという大きな船に途中から乗るのはとても大変なことで、ものすごく緊張したんです。そのときの経験から、彼女の気持ちが理解できたので、なるべく話し掛けて、なじんでもらえるようにしました。

-お芝居についてはいかがでしょうか。

 夫婦を演じる上で、できるだけヒントがほしかったので、現場ではなるべく「園」と声を掛けるようにしました。本番でも、アドリブで会話するときは何げなく「園」と呼び掛けてみたり…。そうすると、ふっと振りむいて「えっ?」という顔をしてくれるんです。そんな“遊び”のような部分から、夫婦の距離感を作っていった感じです。吉二郎の遺髪を手に園が涙を流すシーンでは、リハーサルの後、柏木さんが「渡部さん、髪触ってもいいですか?」と言ってきたこともありました。夫婦として過ごした時間は短かったですが、そんなふうに2人で信頼関係を作っていったおかげで、安心して西郷家を託すことができました。

(取材・文/井上健一)

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

高橋克典「これは吉良の物語でもあるのだと感じていただけるような芝居をしたい」 堤幸彦「『忠臣蔵』は、演劇的に言えば1丁目1番地的な作品」 舞台「忠臣蔵」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年12月10日

-堤さんと高橋さんは高橋さんのドラマデビュー作以来のタッグと聞いています。堤さんは高橋さんの吉良上野介にどのような期待を寄せていますか。 堤 ぴったりだと思いますよ。生き馬の目を抜く芸能界で酸いも甘いも知り尽くしていますから。デビューの瞬間 … 続きを読む

生田斗真が驚きの一人二役!「最初から決まっていたわけではありません」制作統括・藤並英樹氏が明かす舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月8日

-治済に対する仇討ちのため、対立関係にあった蔦重と松平定信(井上祐貴)がタッグを組む展開にも驚かされると同時に、思わず胸が熱くなりました。 藤並 白河藩に戻った後の定信は、それまでとは打って変わって、大田南畝や山東京伝に本を書かせているんで … 続きを読む

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

-戦場で、田丸が絵や漫画を描くことにどのような意味があったと思いますか。  功績係に任命された田丸には、もちろん何かを書き記すという使命感もあったでしょうが、いつ自分や仲間が命を落とすか分からない状況の中で、自分の世界の中で向き合えるものが … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

  -雰囲気のいい現場だったようですね。  中でもしのぶさんは、「これはこういうことなのかな?」といった感じで、積極的に質問をされるんです。その上、「私、緊張しちゃう」などと、ご自身の気持ちを織り交ぜながら現場にいてくださるので、私も質問が … 続きを読む

Willfriends

page top