【インタビュー】『止められるか、俺たちを』門脇麦「これこそ“キラキラ映画”」白石和彌監督「当時の若松さんたちの情熱を焼きつけたかった」

2018年10月12日 / 19:06

 1960年代後半から70年代にかけてエッジの利いた作品を次々と送り出し、若者たちの絶大な支持を集めた若松プロダクション。鬼才・若松孝二を中心に、そこに集った若い映画人たちの型破りで熱い生きざまを描いた鮮烈な青春群像劇『止められるか、俺たちを』が10月13日から全国順次公開される。若松プロ作品初参加で主人公・吉積めぐみを熱演した門脇麦と、若松を師と仰ぐ白石和彌監督に、作品に込めた思いを聞いた。

■メーク:赤松絵利 / ESPER ■スタイリスト:岡本純子 ■衣裳協力:08サーカス

-まず、若松孝二監督を演じた井浦新さんが見事でした。井浦さんの印象は?

白石 こんなむちゃ振り、ないですよね(笑)。でも、それを踏まえて、腹をくくって必死にやってくれました。僕にとって若松孝二は師匠なので、新さんが演じているとはいえ、そんな人に現場でNGを出せるのか、事前に何度もシミュレーションしたんです。その結果、「やっぱり無理」と。それで新さんに「任せます」と伝えたら、「そんなのやめてください」と慌てていましたけど(笑)。とはいえ、いざ始まったら、最後まで見事に演じ切ってくれました。頼もしかったです。

門脇 クランクイン前日に新さんとお話をしたとき、「吐きそう」とおっしゃっていて。心から尊敬している方を演じるということはよほどの覚悟がない限りできないと思います。私だったらやりたくない。でも、それをやると言った新さんの姿を見て、作品の真ん中に立つということがどんなことなのか、改めて教えられました。本当に頼りがいがあったし、新さんを通して、会ったことのない若松さんにお会いできたような気にもなって…。そんなふうに感じたのは、初めての経験でした。

-そんな若松孝二を中心とした若松プロの熱い時代を描きながらも、若松監督ではなく、その下で助監督を務めた吉積めぐみを主人公にした理由は?

白石 これは、吉積めぐみという存在があったからこそ撮れた物語です。若松さんを主人公にするより、何者でもない吉積めぐみが何者かになろうとする話の方が、より間口を広げることができる。さらに言えば、“めぐみ=僕たち”だったので、若松さんよりめぐみに対する思い入れの方が強かった。新宿のゴールデン街で「おまえは何がやりたいんだ」と言われる場面などは、僕ら自身の経験でもありますから。だから、僕の中で若松さんを主人公にするという選択肢はありませんでした。

-それに対して、門脇さんはどのように役作りを?

門脇 まず、物語の中のめぐみを成立させるということを一番に考えました。もちろん、めぐみさんについて皆さんが語った資料などは読み、そこに込められた想いをしっかりと受け止めながら演じたつもりです。ただ、映画の中で自分が演じなければいけないとなったとき、そこは一度、断ち切る必要がありました。何故なら、実際のめぐみさんは、あの時代の真っただ中にいた人で、皆さんが抱いている思いや感傷的な気持ちは知らないはずなので。だから、そういう白石監督たちの思いを感じつつも、「私がやるべきことはそこじゃない」と。その間の道をするするっと見つけながら、やっていた感じです(笑)。

白石 そのあたり、冷静でいてくれたということですよね。確かに当時は、ただただ振り回されているだけだったり、怒られたくないから一生懸命やっていたり、多分その程度のことなんですよ。後から振り返ったとき、その積み重ねが「でもやっぱり俺たち青春していたよね」みたいな見え方になるだけで。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

稲垣吾郎「想像がつかないことだらけだった」ハリー・ポッターの次は大人気ない俳優役で傑作ラブコメディーに挑む【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年12月13日

 稲垣吾郎が、2026年2月7日から開幕するPARCO PRODUCE 2026「プレゼント・ラフター」で傑作ラブコメディーに挑む。本作は、劇作、俳優、作詞、作曲、映画監督と多彩な才能を発揮したマルチアーティスト、ノエル・カワードによるラブ … 続きを読む

DAIGO「クリスマス気分を盛り上げてくれる作品なので、『パーシーのクリスマス急行』にぜひ乗車してください」『映画 きかんしゃトーマス サンタをさがせ!パーシーのクリスマス急行』【インタビュー】

映画2025年12月12日

 イギリスで最初の原作絵本が誕生してから80周年を迎えた人気児童向けアニメ「きかんしゃトーマス」の劇場版『映画 きかんしゃトーマス サンタをさがせ!パーシーのクリスマス急行』が12月12日から全国公開された。シリーズ初のクリスマスムービーと … 続きを読む

高橋克典「これは吉良の物語でもあるのだと感じていただけるような芝居をしたい」 堤幸彦「『忠臣蔵』は、演劇的に言えば1丁目1番地的な作品」 舞台「忠臣蔵」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年12月10日

 元禄時代に実際に起こった仇(あだ)討ちを題材に歌舞伎などで取り上げられて以来、何度もドラマ化、映画化、舞台化されてきた屈指の名作「忠臣蔵」が、上川隆也主演、堤幸彦演出によって舞台化される。今回、吉良上野介を演じるのは、高橋克典。高橋はデビ … 続きを読む

生田斗真が驚きの一人二役!「最初から決まっていたわけではありません」制作統括・藤並英樹氏が明かす舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月8日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。謎の絵師“写楽”が、蔦重の下で歌麿(染谷将太)ら当 … 続きを読む

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

 戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む

Willfriends

page top