【映画コラム】認知症の父と家族との7年間を描いた『長いお別れ』
2019年6月1日

 元中学校校長の昇平(山崎努)の70歳の誕生日。久しぶりに帰省した2人の娘(竹内結子、蒼井優)に、母の曜子(松原智恵子)は、父が認知症になったことを告げる。ゆっくりと記憶を失っていく昇平と家族との7年間を描いた『長いお別れ』が公開された。原作は『小さいおうち』の中島京子。監督は『湯を沸かすほどの熱い愛』(16)の中野量太。

(C)2019「長いお別れ」製作委員会 (C)中島京子/文藝春秋

 アメリカでは、認知症を、少しずつ記憶を失くしてゆっくりと遠ざかっていく様子から、「ロング・グッドバイ=長いお別れ」と表現するのだという。原作と映画のタイトルはそれにちなんでいる。

 本作の、認知症の患者を抱えながら、笑って泣いて前に進む家族の姿が、現実とはかけ離れ過ぎていて甘いという見方もできようが、では、映画でも悲惨で厳しい現実を見たいか、あるいは見せる必要があるのか、せめて映画の中では…という二律背反する思いを抱きながら見た。

 まだ、認知症という言葉が一般的ではなかった頃、森繁久彌が『恍惚の人』(73)で、千秋実が『花いちもんめ』(85)で、いわゆる“ボケ老人”を演じたが、どこか遠い話として受け取っていたような気がする。

 ところが、このところ、彼らよりもずっと若いイメージがあった本作の山崎努や、『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』の藤竜也がそうした役を演じるのを見て、自分にとっても認知症が切迫した問題になってきていることに改めて気付かされた。

 そんな中、変化していく老人を見事に演じた山崎はもちろんだが、実は松原が演じたおうような妻(母)が、この映画の一家を支えているのだと感じさせられた。(田中雄二)

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