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『野生の島のロズ』(2月7日公開)
大自然に囲まれた無人島に流れ着き、偶然起動ボタンが押されて目を覚ました最新型アシストロボットのロズ。都市生活に合わせてプログラミングされた彼女は野生の島では全く機能せず、動物たちの行動や言葉を学習しながら未知の世界に順応していく。
ある日、ガンの卵をかえしたロズに、ひな鳥から「ママ」と呼ばれたことで、思いも寄らなかった変化の兆しが現れる。ひな鳥を「キラリ」と名付けたロズは、キツネのチャッカリら動物たちにサポートしてもらいながら子育てに奮闘することになる。
アメリカの作家ピーター・ブラウンの児童文学「野生のロボット」シリーズを原作にしたドリームワークス・アニメーションの長編映画。
監督は『リロ&スティッチ』(02)や『ヒックとドラゴン』(10)のクリス・サンダース。ルピタ・ニョンゴがロズの声優を務め、ほかにペドロ・パスカル、キャサリン・オハラ、ビル・ナイ、キット・コナー、ステファニー・スーらが声の出演。日本語吹き替え版はロズ役の綾瀬はるかのほか、柄本佑、鈴木福、いとうまい子らが参加した。
この映画のテーマの一つは「ロボットにも愛情はあるのか」だ。前半はロズの変化を通して予測不可能な子育ての大変さや子育てによって親も成長する様子が描かれる。
ロズとキラリの疑似親子ぶりが見ものだが、もともとの原因は、ロズが巣にぶつかってキラリを一人ぼっちにしてしまったことにある。それを知ったキラリの葛藤が中盤の見どころとなる。
やがてキラリはロズから“親離れ”をするが、そこでは終わらないところがこの作品の真骨頂。そこではロズは優秀だが、同時に脅威の存在にもなり得るというロボットの本質も表現されている。なかなかに深い映画なのだ。
島の風景、自然、動物たちを描いた映像美に加えて、ロズの動きや鳥たちの飛翔といったアクションシーンも素晴らしい。宮崎駿の『となりのトトロ』(88)や手塚治虫の『ジャングル大帝』(66)といった日本のアニメの影響もうかがえる。
3月2日(現地時間)に行われるアカデミー賞の授賞式では『インサイド・ヘッド2』とともに長編アニメ映画賞の本命とされている。
(田中雄二)