【映画コラム】メリル・ストリープの役者根性に脱帽!『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』
2016年12月3日

(C) 2016 Pathe Productions Limited. All Rights Reserved

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 1940年代、歌唱力が欠落しているにもかかわらず、カーネギーホールでリサイタルまで開いてしまったフローレンス・フォスター・ジェンキンス。彼女を巡る実話を基に映画化した『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』が公開された。

 フローレンスを演じるのは天下の名女優メリル・ストリープ。前作『幸せをつかむ歌』(15)の初老のロック歌手役から一転、今度は“絶世のオンチ”のオペラ歌手を演じている。いやはやその役者根性には恐れ入るばかりだ。

 これまでアカデミー賞のノミネートは19回を数え、その内3度の受賞を誇る。コメディー、ミュージカル、アクション…。彼女が新たな役に挑戦すればするほど、見る者は食傷し、もう結構ですと言いたくなるところもあるのだが、それでも演じ続けるのは演技派の大女優としての性(さが)なのだろう。そして、最後は見る者を引き込んでしまうところが彼女の真骨頂なのだ。

 今回は、夫役のヒュー・グラントと伴奏ピアニスト役のサイモン・ヘルバーグが、フローレンスの不思議な魅力に引き込まれる男たちを好演し、ストリープと見事なアンサンブルを奏でる。

 また、金持ちマダムの道楽話になりかねない題材を、粋なコメディーに仕立て上げたスティーブン・フリアーズ監督の演出もお見事。フローレンスの姿を通して、情熱と才能は必ずしも一致しないという切なさや哀愁を感じさせる。40年代を再現した衣装やセットが見もの、ジャズを基調とした音楽も聴きものだ。(田中雄二)

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