【週末映画コラム】天才建築家の数奇な半生を描く『ブルータリスト』/『ゆきてかへらぬ』
2025年2月21日
『ブルータリスト』(2月21日公開)

(C)DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVES (C)Universal Pictures
ハンガリー系ユダヤ人の建築家ラースロー・トート(エイドリアン・ブロディ)は第2次世界大戦下のナチスによるホロコーストを生き延びるが、妻(フェリシティ・ジョーンズ)や姪と引き離されてしまう。
家族と新しい生活を始めるためアメリカのペンシルベニアに移住した彼は、著名な実業家のハリソン(ガイ・ピアース)と出会う。ラースローのハンガリーでの輝かしい実績を知ったハリソンは、ラースローの妻と姪のアメリカ移住と引き換えに、あらゆる設備を備えた礼拝堂の設計と建築を依頼する。だがラースローにとって母国とは文化もルールも異なるアメリカでの設計作業には、多くの困難があった。
天才建築家の数奇な半生を描いたヒューマンドラマ。監督は36歳のブラディ・コーベット。昨年のベネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞。エイドリアン・ブロディが『戦場のピアニスト』(02)以来、再びホロコーストから生き延びた人物を演じている。
タイトルのブルータリストとは、無機質なコンクリートやレンガをむき出しにしたブルータリズム(荒々しい)と呼ばれる建築様式を用いる建築家のこと。日本では丹下健三が設計した国立代々木競技場が有名だ。
主人公ラースローの生き方を通して、ホロコーストの影、移民が直面する困難、文化の違いなどが浮き彫りになるこの映画は、逆さの自由の女神像が映る場面が印象的。移民たちが最初に目撃する希望の象徴の失墜が、その後の彼らの多難を示しているからだ。
そんなこの映画は、「序曲~第1章」(100分)「インターミッション(途中休憩)」(15分)「第2章~エピローグ」(100分)という配置で215分の長尺になっているが、全体の構成のうまさや映像や音響の力に加えてインターミッションも効果的で、飽きることなく見ることができる。
また、ラースローは架空の人物だが、インターミッションの前と後とでは大きく印象が異なること、あるいは一人の天才を描いた悲劇的な叙事詩として『アラビアのロレンス』(62)を思い出すところがあった。
今年のアカデミー賞では、主演男優賞候補のブロディと監督賞候補のコーベットが本命視されている。
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