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生まれつき顔立ちが人と違う少年が、困難に立ち向かう姿を描いた『ワンダー 君は太陽』が公開された。監督は『ウォールフラワー』(12)で、思春期の青年たちの揺れ動くデリケートな心の機微をリアルに描いたスティーブン・チョボスキー。
遺伝子の疾患で、人とは異なる顔で生まれたオギー(ジェイコブ・トレンブレイ)。彼は度重なる手術のため、自宅学習を余儀なくされてきたが、両親(オーウェン・ウィルソン、ジュリア・ロバーツ)は、10歳になった息子を、学校に通わせることを決意する。オギーは学校でいじめや裏切りといった試練に遭うが、やがて彼の存在が周囲に変化をもたらしていく。
本作は、オギー、友となるジャック、姉のヴィア、その友のミランダというチャプターに分けて、それぞれの視点から多角的に描いていく。それによって、オギーを中心に見せながら、それぞれの悩みや心情を浮かび上がらせるというユニークな構造が生まれた。
その中で、ミランダのせりふにある「オギーという太陽の周りの家族という惑星の物語」と、新たな状況に飛び込んだ無垢(むく)な主人公が、困難に直面する姿を描く「オギー学校へ行く」という、二つの物語が展開していく。
どちらも、子どもたちの行動や心情が、自然かつ丁寧に描かれているので、家族編ではオギー中心の家族の中で、常に自分を抑えている優しい姉ヴィアの姿が印象に残り、学校編では、オギーはもちろん、友となったジャックやいじめっ子の屈折も含めて、誰もがいとおしく見えてくるところがある。
そして、彼らが体験するさまざまな出来事を通して、最後は、校長が語る「オギーは見た目を変えられない。私たちの方が見方を変えなくては」という真理に思い至ることになる。
話が出来過ぎだと批判するのは簡単だが、この場合、映画を見て、久しぶりに、温かさ、優しさ、清々しさ、真の悪人が出てこない気持ち良さを感じたことの方を、素直に喜びたいという気持ちになる。適度なユーモアも効果的で、映画の隅々から登場人物への愛情が感じられる。
だからこそ、「CINEMABLEND」の批評にあるように、映画を見ながら「視界がぼやけ、涙が頬を伝うけど、ずっとほほ笑んでいられる」のだ。これは、お涙頂戴映画のような、人の不幸や悲劇を見て流すものとは違う質の涙だ。