【映画コラム】異なる世界に住む2人の変化と理解、救済を描いた『グリーンブック』

2019年3月2日 / 15:32

 先に行われた第91回アカデミー賞授賞式で、作品、脚本、助演男優賞(マハーシャラ・アリ)を受賞した『グリーンブック』が公開中だ。

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 1962年、黒人ピアニストのドクター・シャーリー(アリ)は、粗野だが人のいいイタリア系の白人トニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)を運転手兼用心棒として雇う。2人は、黒人専用の旅のガイドブック=グリーンブックを頼りに、人種差別が色濃く残る南部へとコンサートツアーに出るが…。

 異なる世界に住む2人の旅の様子を、実話を基に、ユーモアとペーソスを交えて描いたロードムービー。これまでコメディー映画を中心に撮ってきたピーター・ファレリー監督が新境地に挑んだ作品でもある。

 この映画が、『手錠のまゝの脱獄』(58)に始まり、『48時間』(82)『リーサル・ウェポン』(87)『ドライビング Miss デイジー』(89)『パルプ・フィクション」(94)『メン・イン・ブラック』(97)などへと続いた、これまでの白人と黒人によるバディムービーと大きく違うのは、互いが相手に対して抱くステレオタイプのイメージを崩しているところだろう。

 それは、例えば、トニーは黒人に偏見を持ちながら、カーラジオから流れる、チャビー・チェッカー、リトル・リチャード、アレサ・フランクリンといった黒人歌手の曲はご機嫌に聴く。ところが、ドクは黒人なのに彼らの曲を聴いたことがないという。驚いたトニーが「みんなあんたのブラザーだろ?」と問い掛けるシーン。あるいは、野球好きのトニーが、黒人の大選手であるウィリー・メイズの話をするが、ドクは全く無関心というシーンなどに象徴される。

 あげくに、貧しく粗野なトニーが裕福で教養もあるドクに向かって「オレの方がよっぽどブラック(黒人)だぜ」と言うシーンまである。つまり、こうしたシーンの積み重ねが、自分は黒人でも白人でもないと考えるドクの孤独を浮き彫りにすることにもつながる。なかなかうまい手法だ。

 そんな2人が旅を通して、互いに変化し、人種を超えて理解し、救済し合う様子を見せるのは予定調和で、62年の話にしてはいささか洗練され過ぎているところもあるのだが、モーテンセンとアリの好演もあって、最後は“クリスマスの奇跡を描いた映画”として、いい気分で見終わることができる。

 
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