【映画コラム】シーツをかぶった幽霊の摩訶不思議な物語『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』

2018年11月17日 / 16:10

 『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』が公開された。不慮の交通事故で亡くなった男(ケイシー・アフレック)が、妻(ルーニー・マーラ)への思いを胸に、幽霊となってさまよい続ける様子を描いた映画である。

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 そう聞いて、見る前は、幽霊となった夫と残された妻との切ない交流を描いた、スティーブン・スピルバーグ監督の『オールウェイズ』(89)やジェリー・ザッカー監督の『ゴースト/ニューヨークの幻』(90)をイメージしたのだが、その意味では見事に肩透かしを食らった。

 本作の監督・脚本のデビッド・ロウリーは、幽霊について、過去の映画とは全く違うアプローチを試みている。成仏できない魂、時間と空間、歴史の円環、家、音などをキーワードに展開する摩訶(まか)不思議な物語としたのである。

 加えて、白いシーツをかぶった幽霊というビジュアルのおかしさに反して、テレンス・マリックの映画をほうふつとさせるような精神世界や、哲学的な実存主義を内包させているのもユニークだ。

 また、全体の構成も、スタンダードサイズの画面に額縁型のフレームが付き、カメラは長回しで、会話はほとんどなく、その分日常の音が目立つ。それ故、正直なところ、見ながらしばしば睡魔に襲われた。唐突な終わり方は、よく言えば余韻を残すが、悪く言えばもやもやが残るだけ…。明確な答えのない精神世界を描いているだけに、好き嫌いが分かれる映画だと思う。(田中雄二)

 


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