【映画コラム】黒人がKKKに入団!? うそのような潜入捜査を描いた『ブラック・クランズマン』

2019年3月23日 / 17:54

 実際にあったうそのような潜入捜査の様子を、コミカル味を交えながら描いたスパイク・リー監督の『ブラック・クランズマン』が公開された。

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 舞台は、1970年代半ばの米コロラド州コロラドスプリングス。この町で黒人として初めて刑事になったロン・ストールワース(ジョン・デビッド・ワシントン)が、白人至上主義を掲げる過激派団体KKK(クー・クラックス・クラン)に入団し、彼らの悪事を暴く。ロンいわく「俺は電話担当。代わりに白人刑事のジマーマン(アダム・ドライバー)が彼らと会う」のだが…。

 オープニングで『風と共に去りぬ』(39)の南軍の拠点アトランタ陥落のシーンが映る。続いてボーリガード博士(アレック・ボールドウィン)なる人物が登場し、人種隔離を違憲としたブラウン判決について語る映像が流れる。

 後半には、DW・グリフィスの『國民の創生』(1915)のKKK団による黒人襲撃のシーンを見ながら、団員たちが歓喜する場面もある。これらは、映画や映像が、いかに米南部やKKK団、黒人のイメージに影響を与えたのかを示すものとして印象的に映る。

 このようにリー監督は、本作では以前のように主張や過激さを前面に出すのではなく、過去の映像やファンキーな音楽、ユーモアを交えながら、あくまで劇映画として面白く見せることに腐心している。

 特に、ジマーマンをユダヤ人とすることで、白人の間でも差別が歴然と存在することを明らかにするほか、KKKの親玉デビッド・デュークを演じたトファー・グレイスが「ロンとデュークの間にある敵意をユーモアに変える脚本が素晴らしい。ユーモアが人を引き付ける」と述べたように、皮肉な笑いを交えながら、差別や偏見の実態を浮き彫りにした、リー監督を含めた脚本チームの仕事が素晴らしい。アカデミー賞で脚色賞を受賞したのも当然という感じがする。

 一方、ロンを演じたワシントンが「コロラドスプリングスの警察署で、ロンの目的達成のために、黒人以外の職員が協力していたことを知って、安心したような、驚いたような、うれしい気持ちになった。1970年代のコロラドスプリングスでできたのだから、今でもきっとできるはずだ」と語るように、本作にはかすかな希望を感じさせるところもある。

 また、白人が憧れた黒人として、劇中に『黒いジャガー』(71)などのブラックムービー、黒人初の大リーガー、ジャッキー・ロビンソン、黒人のスター選手のウィリー・メイズやO・J・シンプソンの話題が出てくるのも反意的で面白かったし、過去のリンチ事件の語り部役で黒人歌手のハリー・ベラフォンテが出てきたのには驚かされた。

 
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